2015 Fiscal Year Annual Research Report
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15H06302
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
岡田 陽平 神戸大学, その他の研究科, 准教授 (30760532)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 国際機構 / 国際責任 / 責任追及手続 / 裁判権免除 / 平和維持活動 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年4月、「国際機構責任の追及メカニズムの研究」というテーマの下で研究を開始した。本研究は、国際機構の国際違法行為責任を追及するために被害者が利用しうる手続について体系的に分析するものであり、その現状と問題点を明らかにすることを目的とする。 報告者は従前、相対的に新しい国際法主体としての国際機構の法的地位に着目し、その国際法上の責任について分析を行ってきた。とりわけ、国連国際法委員会の国際機構責任条文(2011年)に象徴されるように、国際機構責任を規律する実体法規則を巡って、近年大きな進展がみられる。平成26年度までは、中でも学問的および実践的に重要と考えられる行為帰属論について取り組み、その成果を博士論文としてまとめた。本件研究は、報告者のこれまでの研究、すなわち、国際機構責任の実体的側面に関する研究に引き続き、その手続的側面について検討するものである。 平成27年度は、国際機構責任追及手続の体系的分析に取りかかる前提として、1.国際機構の責任を追及するために利用されてきた(あるいは利用されうる)手続に関する先行研究の整理を行うとともに、2.最新の事例の分析を行った。 1の結果、今日の国際機構責任の追及手続に関する基本的なアイデアは、国際連盟期から国際連合創設までの時期にすでに確立していた、という暫定的な結論に至った。また2では、近年の国際的な司法機関および準司法機関、そして国内裁判所の事例について分析を行った。すでに手続が完了した事例について研究会等で報告を行うとともに、現在進行中の訴訟手続についても、現時点で入手可能な一次・二次資料を分析し、同様の報告を行う準備を進めつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、早い段階で研究会やセミナーにて日本語・英語の双方で本件研究課題に関する報告を行う機会を得た。10月に所属研究機関の変更があり、エフォートの率が減少したものの、その後もおおむね当初の計画通りに研究は進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度は主に、国際機構責任追及手続の体系的分析に取りかかる前提として、1.国際機構の責任を追及するために利用されてきた(あるいは利用されうる)手続に関する先行研究の整理を行うとともに、2.最新の事例の分析を行った。平成28年度(2年目・最終年度)は、これらの作業を継続するとともに、本研究のまとめに取りかかる。 第一に、国際連合創設から今日に至るまでの間に公表された先行研究を分析し、1の結果得られた暫定的な結論(「研究実績の概要」を参照)を補完すると同時に、それら先行研究において検討の対象となっている、比較的新しい手続のあり方についても調査を行いたい。その際には、問題の国際機構の本部所在地(公文書館等)に直接足を運び、資料の収集やインタヴュー調査を行う。 第二に、現在進行中の訴訟手続の分析を継続するとともに、最近手続が完了した最新の事例について検討を加える。前者について、当事者の主張や口頭弁論の内容が、インターネット等を通じてデータ(文書ないし音声)のかたちで入手可能な場合には、それらを利用するが、そうでない場合には、実際に法廷地において調査を行う必要があると考えている。後者については主として、コソヴォにおける国連平和維持活動(UNMIK)による人権侵害に係る訴えを処理するために設置された人権諮問パネルの最新の見解(2016年2月26日)を扱う。 最後に、本研究のまとめであるが、これは2つの観点から行う予定である。まず、国際機構の法的責任を追及するための手続を全体として体系的に把握し、責任追及メカニズムの現状と問題点を明らかにすることを目指す。次に、責任追及メカニズムと実体責任法理の相互作用についての分析を行う。これは本研究の学術的新規性の中核をなす。かつ、この分析を通じて得られる結論は実践的重要性がきわめて高いものになると思われる。
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Research Products
(2 results)