2015 Fiscal Year Annual Research Report
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15H06312
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
阿部 健 京都大学, 学際融合教育研究推進センター・スーパーグローバルコー ス実施準備ユニット, 助教 (80748327)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | ナヴィエ・ストークス方程式 / ストークス半群 / 有界関数空間 / 軸対称流 / 非減衰流 |
Outline of Annual Research Achievements |
非圧縮粘性流体の運動を記述するナヴィエ・ストークス方程式について軸対称初期値と非減衰初期値に対する可解性の研究を行った. 軸対称初期値に対する可解性の研究は初期速度場の方位角成分が恒等的にゼロとならない場合(軸対称旋回あり初期値)を扱った. 軸対称旋回なし初期値に対しては初期値の大きさに関わらずコーシー問題の時間大域解が一意に存在することが知られているが, 旋回あり初期値の場合には不明である. 本研究では対称軸を含む円柱の外部の領域において, 滑り境界条件のもとで軸対称旋回あり初期値に対する方程式の時間大域可解性を証明した. 軸対称旋回なし初期値に対しては円柱の半径について極限をとることで, 解はコーシー問題の滑らかな解に収束することがわかっているが, 本結果により旋回がある場合にも同様のアプローチによる解析が可能になった. また渦度場の方位角成分のエネルギーノルムを近似パラメーターにより評価し, 極限で解が非有界となる可能性のあるレートを導いた.
非減衰初期値に対する可解性の研究では, 外部領域上空間無限遠での減衰を仮定しない有界関数空間において時間局所解の一意存在を証明した. 以前の研究においてはストークス半群とヘルムホルツ射影作用素の合成作用素が空間無限遠で減衰する空間に制限されていたため, 非減衰空間においては積分方程式の解(Mild solution)を定めることが困難であった. 本研究では合成作用素が非減衰空間へと一意的に拡張できること広義一様収束近似の議論とポテンシャル論の方法を用いて示した. これにより定常解(D-solution)を含む非減衰空間においてMild solutionが時間局所的に存在することを証明した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
軸対称旋回あり流の研究は3次元的な流れの正則性を解明する上で重要であり, 外部領域における時間大域可解性の結果を得たことは大きな進展であった. 研究計画では平成28年度に近似極限や時間無限大の挙動について研究を進める予定であったが, これらの目的の為にはMild solutionを構成する必要があることがわかった. このため, まず線形作用素についての基礎的研究を行う. 非減衰流の研究については, ストークス作用素の合成作用素の拡張について, 見通しの良い拡張方法が見つかった. このため, 時間局所解の構成について平成27年度中に研究を前倒して完成させた. 非減衰空間におけるMild solutionの存在は, 2次元時間大域可解性や定常解の安定性の研究において重要な進展である. 以上の進歩状況から, 研究計画はおおむね順調に進展していると評価する.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の重要課題は全空間上の軸対称解の正則性解明である. この為にまず外部領域上のヘルムホルツ射影作用素やストークス半群など, 解析の手段となる線形作用素についての基礎的研究を行う. 近似極限については渦度場のエネルギーノルムの評価を改良することが手掛かりとなるので, 爆発解析や輸送拡散方程式の解の正則性の研究手法なども取り入れて研究を進めたい.
非減衰初期値に対する可解性の研究については2次元時間大域可解性や定常解の周りでの安定性が重要な課題である. 解の時間大域挙動は境界上生成される渦の伝播に関係しており, 時間大域的アプリオリ評価の導出が課題である. 定常解の研究手法等を参考にして研究を進めたい.
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Research Products
(13 results)