2015 Fiscal Year Annual Research Report
フラグメント分子軌道法と密度汎関数強束縛法を用いた理論開発とその応用
Project/Area Number |
15H06316
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西本 佳央 京都大学, 福井謙一記念研究センター, 特定研究員 (20756811)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 計算化学 / 量子化学 / 分子動力学シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、フラグメント分子軌道(FMO)法と密度汎関数強束縛(DFTB)法を組み合わせた、FMO-DFTB法と呼ばれる手法を用いる。この手法は非常に高速な計算手法であることがわかっているが、現状では信頼できる分子動力学シミュレーションを行うことができない点と、系によって計算がうまくいかないという問題がある。今年度の研究では、この二点の問題を解決することを目指した。 まず一つ目に、FMO-DFTB法のエネルギー勾配を完全に解析的なものにした。これまでは、外部の静電場による応答項を適切に計算できなかったが、self-consistent Z-vectorと呼ばれる式を解くことにより、エネルギー勾配を完全に解析的なものにした。導出した式をプログラムに実装して、FMO-DFTB法を用いた分子動力学シミュレーションを行い、ハロゲン化水素の動径分布関数を予測した。執筆した論文を誌上発表した。 二つ目に、polarizable continuum model(PCM)法と呼ばれる、溶媒効果を取り入れるためによく用いられる手法をFMO-DFTB法へ適応可能にした。これまでの問題点は、系に存在する電荷によるポテンシャルが強すぎることが問題であったため、溶媒効果を導入することにより、より現実に近いポテンシャルを記述することを目指している。これまではFMO-DFTB法を用いて、現実的なたんぱく質の計算ができなかったが、本研究で開発したFMO-DFTB/PCM法を導入することにより、電荷の問題を解決することができた。前段階として開発した時間依存DFTB法に関する論文を執筆し、誌上発表をした。さらに、FMO-DFTB/PCM法に関する論文を執筆して、論文投稿をした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画では、分子動力学シミュレーションへの応用と、溶媒効果の取り入れを目指した。研究実績で示したとおり、実際にFMO-DFTB法を用いた分子動力学シミュレーションを可能にし、さらに応用計算を行った上で論文を誌上発表している。さらに、溶媒効果を取り入れた、FMO-DFTB/PCM法を実装し、論文投稿を行ったところである。このため、おおむね研究計画の通りに研究が進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは投稿したFMO-DFTB/PCM法に関する論文が受理されることを目指す。その後は、当初の研究計画の通り、FMO-DFTB法を化学反応へと応用することに着目して、研究を進めていきたいと考えている。
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Research Products
(6 results)