2015 Fiscal Year Annual Research Report
Treg細胞における転写制御因子Id蛋白質による転写ネットワークの解明と炎症制御
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15H06330
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宮崎 和子 京都大学, 再生医科学研究所, 研究員 (00311811)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 転写制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、制御性T(Treg)細胞における、E蛋白質とその拮抗因子であるId蛋白質を軸とした転写制御機構について、高次クロマチン構造を中心としたゲノムワイドな分子生物学的解析を行い、Treg細胞の活性化・炎症抑制における転写ネットワークを解明することを目的としている。本年度は、野生型およびId2/Id3欠損細胞のRNA-seqのデータを解析し、トランスクリプトームをさらに詳細に検討した。その得られた結果から、Id2/Id3欠損細胞で有意に発現が上昇している遺伝子の1つに着目し、そのノックアウトマウスを入手して、Id2/Id3欠損マウスと交配を始めるところまでに至った。 また、計画どおりに野生型とId2/Id3欠損(dKO)マウスからTreg細胞をソーテイングし、ATAC-seqを行うことができた。次世代シークエンサーで得られたシークエンス結果から、ライブラリーのクオリティーチェックを行ったところ、少ない細胞数でもよいライブラリーを構築できており、クロマチンアクセシビリティの変化を比較する解析を進めることができた。野生型とdKOTreg細胞から、それぞれ約5万カ所のopen chromatin regionを同定した。それらのうち、約1万カ所がプロモーター領域に、約4万カ所がエンハンサー領域にあることが判明した。プロモーター領域におけるATAC-seqのピークは、約90%が野生型とdKOTreg細胞とで同じ部位であることが判明した。また、エンハンサー領域におけるATAC-seqのピークは、約80%が野生型とdKOTreg細胞とで同じ部位であることが判明した。一方、新規にクロマチンがopenになった部位として、約1万カ所を同定した。さらに、ATAC-seqとRNA-seqの結果を比較すると、クロマチンアクセシビリティと遺伝子発現の増減が相関する傾向が確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実施計画にある3つの解析のうち、RNA-seqとATAC-seqを行い、データ解析を行うことができた。しかし、ChIP-seqによる、クロマチン修飾変化の検討を行うことができなかった。これは、通常のChIP-seqを行うことが出来るだけの細胞数のdKOTreg細胞を得ることが困難なためであった。dKOTreg細胞でChIP-seqを行うには、プロトコルの改善が必要となった。
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Strategy for Future Research Activity |
制御性T(Treg)細胞における、E蛋白質とその拮抗因子であるId蛋白質を軸とした転写制御機構の解明を目的とするので、クロマチン修飾変化の検討は必須である。本年度実施できなかったChIP-seqを行うことを、今後の研究の推進における優先課題とする。dKOTreg細胞でChIP-seqを行うには、プロトコルの改善が必要となったが、この問題点に対しては、海外の研究者との連携により改善策を見出すことができた。次年度には、まず新規プロトコルを試みる。ChIP-seqを成功させてdKOTreg細胞におけるエンハンサーレパトア解析し、遺伝子プロファイルと比較検討することにより、Treg細胞の炎症抑制におけるエピジェネテイック制御の解析を行う。さらに、tethered chromosome conformation capture (TCC)法を用いて、野生型とId2/Id3欠損Treg細胞のクロマチン相互作用の違いをゲノムワイドに検討するステップに進む。
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Research Products
(1 results)