2015 Fiscal Year Annual Research Report
多機能型蛋白性ナノ粒子の最適設計による新規感染症ワクチンの開発
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15H06349
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
三里 一貴 大阪大学, 微生物病研究所, 特任研究員(常勤) (10756638)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | ワクチン / 感染症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、改変型Spy0128から形成されるナノサイズの人工線毛(Spy0128重合体)を、ワクチン用の蛋白性ナノ粒子/バイオナノ素材として最適デザインすることで、リンパ節・樹状細胞への移行能に優れるうえ、「ワクチン抗原」および「アジュバント」としての両特性を併せ持つ「多機能型蛋白性ナノ粒子/バイオナノ素材」の創製を図る。本年度は①重合度の異なる人工線毛(Spy0128重合体)の合成と物性評価、②ワクチン効果の評価、③GAS感染阻害能の評価を予定していた。既に、モノマーである改変型Spy0128を還元状態・アルカリpH状態にすることで、Spy0128重合体を合成済みであるため、本Spy0128重合体を二週間に一回、計二回マウスに皮内投与した。その際、既存のアジュバントである水酸化アルミニウムとの共投与群においても評価した。その結果、単独投与群および、アジュバントとの共投与群の両群で、改変型Spy0128と比較してSpy0128重合体を投与した群でわずかに高い抗体価の上昇が認められた。IgGサブタイプに関しても評価したところ、IgG1ではTotal IgGと同様の傾向が認められたが、IgG2cではどの群に関しても顕著な上昇は認められなかった。今後は、血中の抗体価以外でのSpy0128重合体のワクチン抗原としての有用性評価を評価する予定である。また、A型レンサ球菌感染モデルを用いたワクチン効果の検討について、後述するように、平成28年度に検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は①重合度の異なる5種類の人工線毛(Spy0128重合体)の合成と物性評価、②ワクチン効果の評価、③GAS感染阻害能の評価を予定していた。①、②に関して研究を遂行することにより、Spy0128重合体を免疫することで血中抗体価の上昇が認められることを明らかとした。一方で、③に関しては現在、投与するA型レンサ球菌の菌量等の条件検討を行っている段階であり、Spy0128重合体の感染阻害能に関して評価できていない。条件が設定でき次第、随時感染実験を行う予定である。以上のことから、本年度に関しては当初計画していた研究予定よりも少し遅れていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画していたよりも進捗が少し遅れているが、共同研究先の先生方に随時ご指導をいただきつつ、鋭意研究を進めている。A型レンサ球菌による感染実験について、大阪大学歯学研究科・教授の川端重忠先生にご指導いただき、実験毎の菌量のばらつきを最小限に抑えて予備検討を行っている。その結果、感染モデルも構築できたことから、平成28年度には、Spy0128重合体を水酸化アルミニウムなどのアジュバントと共に投与した後、A型レンサ球菌を感染させることで、感染阻害能を指標にワクチン効果を検討する予定である。また、Spy0128重合体のワクチンアジュバント効果を、in vitroで評価する。具体的には、マウス骨髄由来の樹状細胞(マウスの骨髄を回収し、Flt3Lと1週間共培養することで誘導)や、ヒト末梢血から採取した単核球(樹状細胞を含む免疫細胞を多く含有)に、Spy0128重合体を添加し、産生されたサイトカイン(IFN-α、IFN-γ、IL-12など)をELISAにより定量解析する。さらに、一般毒性評価、体内動態・細胞内動態の解析に関しても、In vivoおよび、In vitroの両面から解析することにより、Spt0128重合体の有用性を評価してゆく予定である。 本年度と同様に計画通りに研究が進まない場合には各分野の専門家の共同研究者と随時議論を進め、多方面からの意見を基に、PDCAサイクルにより軌道修正を図る予定である。
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