2015 Fiscal Year Annual Research Report
インスリン分泌における小胞体ストレスセンサーIRE1aの機能とその分子機構の解析
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15H06410
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
芝 陽子 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教 (50755866)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | インスリン / 小胞体ストレスセンサー / 阻害剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
当研究室では以前にIRE1αのRNaseドメインを膵島で特異的にノックアウトしたマウスでインスリン分泌量の低下がみられることを発見した。本研究ではIRE1αのRNase活性の阻害がなぜインスリン分泌を阻害するかについて、IRE1αのRNase活性阻害剤を培養細胞系の膵島β細胞にかけることで調べた。1. IRE1αのRNase活性阻害剤、4μ8cおよびSTF083010を膵島β細胞にかけるとインスリン分泌が2時間以内で阻害されることを明らかにした。 2.構成性分泌が阻害されてないかどうかSecreted Alkaline Phosphatase (SEAP)を膵島β細胞に発現させて調べたところ、4μ8cをかけた時にSEAP)の分泌は阻害されていなかった。このことは4μ8cはインスリン分泌を特異的に阻害していることを示唆する。 3.インスリンの合成量を高グルコース時に[35S]-Met/Cysで細胞内タンパク質を30分ラベルして調べたところ、4μ8c存在下でインスリン合成量はコントロールと比べて10%低下していることが明らかとなった。 4. インスリンの成熟速度を[35S]-Met/Cysで15分細胞内タンパク質をラベルして、その後30,60,120分インキュベーションしてインスリンが成熟型になる速度を調べたところ、4μ8c存在下でインスリンの成熟速度はコントロールと比べて変化がないことがわかった。 5. SNAPタグをつけたインスリンを膵島β細胞に発現させて4μ8cをかけたところ、インスリンの細胞内局在には変化がないことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
4μ8cを膵島β細胞にかけてインスリン分泌を5分から2時間のタイムコースで測定したところ、5分の段階で4μ8cはインスリン分泌を阻害している可能性があることが明らかとなった。IRE1αは小胞体に存在し、インスリンの生合成に関与していると考えられることから、4μ8cにはIRE1αのRNase活性の阻害効果に加えて、他の細胞内因子も阻害している可能性が考えられる。SEAPの分泌には影響がないことから、このIRE1α以外の因子に対する阻害効果はインスリンのような調節性分泌経路にだけ存在するものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
まず4μ8cのIRE1α以外の因子に対する阻害効果がインスリンの生合成段階にあるのかエクソサイトーシスの段階にあるのかを明らかにする。現在は培養細胞系の膵島β細胞を用いているが、培養細胞だと高グルコースにして5分の段階だとインスリン分泌がはっきりとは見えないため、マウスから膵島をとって高グルコース存在下で5分で4μ8cの効果が現れるかを見る。4μ8c存在下でインスリン分泌が5分で阻害された場合、エクソサイトーシスに関わる因子を4μ8cが直接阻害している可能性が高い。これを明らかにした上で、今後はIRE1αの阻害にはレンチウィルスにsiRNAもしくはsgRNAを入れて阻害を行う。Preliminaryな結果では、4μ8c存在下で蛍光抗体法によりインスリン顆粒の量が減少している可能性があること、またIRE1αのRNaseドメインの変異体をマイクロインジェクションにより15時間程度で発現させたところ、インスリンの合成阻害が起こることがわかった。このことはIRE1αが短時間の間にインスリンの生合成に関与していることを示唆する。今後は高グルコース時にIRE1αに別のタンパク質が結合していないかどうか免疫沈降法によって結合タンパク質を調べ、遺伝子発現を介さずにIRE1αがインスリン分泌に影響を与える分子機構を明らかにする。
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