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2015 Fiscal Year Annual Research Report

故意の概念とその認定方法の相互連関について

Research Project

Project/Area Number 15H06415
Research InstitutionShimane University

Principal Investigator

大庭 沙織  島根大学, 法文学部, 講師 (10758444)

Project Period (FY) 2015-08-28 – 2017-03-31
Keywords殺意 / 未必の故意 / 心理的障壁 / Hemmschwelle / 故意の認定 / 規範化 / 客観化
Outline of Annual Research Achievements

平成27年度は、殺人の故意の認定においてドイツの連邦通常裁判所が用いる「抑制をかける心理的障壁論」を検討するとともに、それを通して、故意を行為者の実際の心理状態として理解すべきか、それとも、故意の客観化・規範化を認めるべきかということを検討した。
故意概念はすべての犯罪類型に共通であるとされている。しかし、故意の認定の方法や認定の容易さには犯罪類型によって違いがあるはずであり、さらに、それが概念にも影響を及ぼしているのではないか、すなわち、ある犯罪では行為者の実際の心理状態として故意を扱っている一方で、他の犯罪では行為者の心理状態に沿うよりも一般的経験則や客観的事実からの推論に重きを置くかたちでの故意の規範化が進んでいるのではないか、という疑問がある。わが国においてこの問題が明らかには指摘されていないものの、ドイツでは文献上この問題への言及がみられる。中でも、「抑制をかける心理的障壁論」は、殺人の故意に特化したものであって、この問題を扱う上ではその検討が非常に重要である。また、殺人の故意に関しては、判例文献ともに非常に数が多く、従来の判例の傾向と学説の状況をまとめることが必須であった。そこで、本研究ではBGHにおける「抑制をかける心理的障壁論」の登場から、近年の衰退傾向までをまとめ、BGHが故意について何を予定しているかを明らかにするとともに、それに対する学説の反応をまとめた。これを通して、当初は行為者の実際の心理状態として故意を理解するがゆえに「抑制をかける心理的障壁論」が登場したにもかかわらず、現実には、故意を規範化する見解と同じ構造で故意を理解するに至った可能性があるという示唆を得た。故意についての心理的理解と規範的理解とは対立関係にあるものと考えられてきたが、そのような議論の前提に対し新たな視点を投げかける可能性を得たといえよう。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

平成27年12月に本研究成果を瀬戸内刑事法研究会で報告し、研究者及び実務家から助言を得た。この研究の成果を論文にする作業は現在も続いているが、平成27年度末の時点で当該論文の多くの部分は完成していること、研究が進むにつれて当初の予想よりも資料が豊かになったことや関連する論点をさらに発見できたことを顧慮すると、研究は順調に進展しているといえる。
当初の計画では、BGHの「抑制をかける心理的障壁論」というテーマからは故意概念については認定論との関係で示唆を得ることになると考えていたが、予想以上に故意概念自体に踏み込んで論じうることを発見できた。このことは平成28年度に計画している研究やその後の研究にとっても有意義な結果である。

Strategy for Future Research Activity

まず、速やかに平成27年度の研究成果をまとめた論文を完成させることに尽力しなければならないが、平成28年度の計画の変更を要するほどの遅れはない。
平成28年度の計画どおり、犯罪類型ごとに故意を検討し、犯罪類型の違いが故意に影響を与えているかどうかを検討する。まずは、詐欺罪の故意について検討を行う予定である。さらに、比較対象であるドイツの文献では背任罪や横領罪の故意も論じられているので、それらの故意についても検討する可能性がある。人の生命という法益を侵害する殺人罪と財産を侵害する財産罪とでは、行為者側の心理に与える影響、故意の認定の容易さ、犯罪計画の有無や程度等に差異があることが予想され、両者を対比することに意義があると思われるので、平成27年度に行った殺人の故意の検討と連続性を持たせるようにしたいと考えている。
次に、放火罪における延焼の認識について「抑制をかける心理的障壁」のような考慮が働いているか検討する。ここでは、より重大な結果が認識対象であることが、人間の主観を問題とする故意概念においてどのような影響をもつかを明らかにする予定である。「より重大な結果」という点で殺人罪と共通しているので、両者を比較することは、「抑制をかける心理的障壁」が結果の重大性を根拠とするものであるか否かを考察することに有意義である。

  • Research Products

    (1 results)

All 2015

All Presentation (1 results)

  • [Presentation] BGHにおける「抑制をかける心理的障壁論」と故意概念2015

    • Author(s)
      大庭沙織
    • Organizer
      瀬戸内刑事法研究会
    • Place of Presentation
      松山大学文京キャンパス
    • Year and Date
      2015-12-19 – 2015-12-19

URL: 

Published: 2017-01-06  

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