2015 Fiscal Year Annual Research Report
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15H06421
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
三谷 奈見季 岡山大学, その他部局等, 助教 (40581020)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 発現制御 / 輸送体 / 植物分子生理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、植物の複合ストレスを軽減できる有用元素「ケイ素」の吸収を担うケイ酸輸送体Lsi1の発現制御機構の解析として、Lsi1のケイ素に応答した発現量調節に関わるシス配列の探索を行った。これまでに、イネは地上部のケイ素集積量に応じてケイ酸輸送体の発現量を転写レベルで調節していること、さらにpromoter deletion lineを用いた解析によりLsi1の転写量の調節に関わるシス配列候補領域がその上流600bpまでに含まれること明らかにしてきた。本年度は、研究計画に沿ってシス配列の絞り込みを行うとともに、5'-UTRの転写制御への関与についても検討を行った。まず、Lsi1の5'-UTRの関与を検討するため、Lsi1上流1.6kbの5'-UTRを含む配列と除いた配列とをGFPレポーター遺伝子と連結しイネを形質転換した。得られた形質転換体を用いケイ素に対するGFPの発現応答を調べた結果、UTRの有無にかかわらずケイ素欠乏条件下で発現の増加が見られたことから、UTRの関与は否定された。Lsi1の上流領域を3’側から削ったpromoter deletion lineを用いて、ケイ素に対する応答を見た結果、ATGより上流約400bpまで削ってもケイ素に対する発現応答は維持された。そこで600-400bpの領域のみを35S minimal promoterとGFPとつなぎイネを形質転換したが、野生株に見られるようなケイ素に対する発現応答は見られなかった。以上の結果を総合するとシス配列候補領域はLsi1の上流に3か所存在し、さらに少なくともそのうちの2か所が存在すればケイ素集積量に応じた発現量の調節が可能であることが示唆された。 今年度の研究で得られた上述の結果は昨年末に開催された日本土壌肥料学会関西支部会にて口頭発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究を進めていくにつれ、最初の予想とは異なる結果が得られた。具体的にはケイ素応答に関与するシス配列の候補領域は当初一カ所だと考えていたが、現在までの実験結果から少なくとも3か所存在する可能性が示唆され、しかも少なくともそのうちの2カ所があれば発現の応答が見られる結果が得られている。このことから、当初計画していたシス配列をある程度絞ったうえでyeast one-hybrid法を用い転写調節因子の探索を行う計画がその通りには進んでいない。したがって研究進捗状況としてはやや遅れているとするが、新たな知見が得られたことから今後の研究が大きく発展する可能性を秘めていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度はまず、3候補領域をある程度絞り込む必要がある。方法は計画に記した通りとする。絞ったうえで、転写調節因子の探索を研究計画に沿って行う。 さらに研究計画に記載したように、地上部のケイ素集積量を地上部へと伝えるシグナル分子の単離を野生株とケイ素集積欠損変異体を用いたRNA-seqによって候補遺伝子の探求を行うこととする。
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Research Products
(2 results)