2015 Fiscal Year Annual Research Report
MRIアーチファクトフリーを示す歯科用Au-Pd-Pt-Ti合金の開発
Project/Area Number |
15H06441
|
Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
武川 恵美 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部, 助教 (50633872)
|
Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
|
Keywords | 金合金 / 歯科用 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、Au-Pd-Pt-Ti合金の開発の前段階の研究としてAu-Pd-Ti合金の開発を行った。 磁化率が-9ppmを示すAu-32mass%Pd合金を基に、硬さ向上を目的としてTiを添加したAu-Pd-Ti合金はPd=10-40%、Ti=1.5-5%の組成範囲で磁化率-9ppmを示す組成が存在することが分かった。ビッカース硬さは、Au-32Pd合金の約70Hvに対して、Au-Pd-Ti合金は溶体化処理後で200Hv以上を示すことが分かった。時効処理を施すとビッカース硬さが250Hv以上に増加し、これまでの研究で得られたAu-Pt-Nb合金の最大約200Hv以上、TypeⅣ金合金(210~290Hv)、金銀パラジウム合金(200~320Hv)程度の強度を示すことが分かった。これは、金属間化合物Au4Tiによる析出硬化により強度が向上したと考えられた。また、同時に磁化率は減少したが、これはAu4Ti以外の相が析出している可能性も考えられた。 以上より、平成27年度の研究では、Au-Pd-Ti合金はPd=10-40%、Ti=1.5-5%の組成範囲で、磁化率-9ppmを示す組成が存在し、磁化率が-9ppm以上の組成でも時効処理により磁化率の調整と強度の向上の両立が可能であることが明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、これまでに開発した非磁性Au-Pt-Pd合金に生体親和性に優れた第4元素Tiを添加し、アーチファクトフリーを維持しつつ、歯科用合金に適した強度を示すAu-Pt-Pd-Ti合金を開発することを目標としている。平成27年度はAu-Pd-Pt-Ti合金の開発の予備的な研究として、Au-Pd-Ti合金対象とし、Au-Pt系の2相分離とAu-Ti系の析出硬化が磁化率と硬さに及ぼす影響を明らかにすること、を目標としていた。そこで得られた結果をもとに、平成28年度はPdの一部をPtに置き換えたAu-Pd-Pt-Ti合金の開発を予定していた。平成27年度の研究では、Au-Pd-Ti合金は、Pd=10-40%、Ti=1.5-5%の組成範囲で磁化率-9ppmを示す組成が存在し、高強度を示すことが分かった。時効処理を施すと強度の向上と磁化率の低下が見られた。強度の向上は金属間化合物Au4Tiによると考えられたが、磁化率の低下の解明については間に合わなかった。しかし、磁化率が-9ppmを示す組成範囲の絞込みと強度の向上、強度と磁化率の相関性の確認ができたことから目標を概ね達成できたと考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成27年度に開発したAu-Pd-Ti合金を基にPdの一部をPtに置き換えたAu-Pd-Pt-Ti合金を本年度の研究対象とする。Pt添加によりアレルギーの懸念があるPd量を低減する。また、Ptは耐食性を向上させるため、Pd、Tiの溶出を抑制することも期待できる。しかし、これまでの研究から、Au-Pt系の2相分離時にPd濃度の高い相が析出すると、磁化率が大幅に変化することが分かっている。よって、Ptの添加量はAu-Pd系の高い伸びを維持しつつ、Au-Ti系の析出硬化を優先的に促進し、Au-Pt系の2相分離を抑制する範囲内とする。しかし、2相分離が優先的に促進し時効処理後に磁化率が変化する場合は、高強度を示す組成に限り、組成の微調整→時効処理→磁化率とビッカース硬さの評価を繰り返し行い、磁化率が-9ppmに調節可能か検討する。 以上から、平成28年度はAu-Pd-Pt-Ti合金を開発の対象とし、時効処理前後の硬さ、磁化率、結晶構造を調べ、磁化率-9ppmでアーチファクトフリーを維持しつつ時効処理により硬化が可能な組成を絞り込む。 開発が順調に進めば、絞り込んだ組成に対して、生体内での耐食性、イオン溶出速度の評価を行う。実験には九州工業大学 横山賢一准教授の協力を得る。また、塩化物イオンが豊富な唾液中ではAuは腐食を示すことが知られており,超長期的に体内で使用される歯冠補綴物を想定して,電気化学的な加速腐食試験を行う必要がある。耐食性とイオン溶出の評価に問題がなければ,アーチファクトフリーの歯科用合金に最も有望な合金として選抜する。
|