2015 Fiscal Year Annual Research Report
慢性腎臓病に伴う骨ミネラル代謝異常の成因となる甲状腺ホルモン初期分泌機構の解明
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15H06442
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
増田 真志 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部, 助教 (50754488)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 慢性腎臓病 |
Outline of Annual Research Achievements |
リンは骨形成やエネルギー代謝など生体機能維持に必須の栄養素である。血中のリンは腸管での吸収や腎臓での再吸収および尿中への排泄によりその恒常性は保たれる。腎臓からのリン排泄を促進する最も重要なホルモンが副甲状腺ホルモン (PTH) である。しかし、慢性腎臓病 (CKD) のように正常な腎機能が損なわれると、腎臓でのリン調節機構が破綻し高リン血症を呈する。長期の高リン血症状態は、二次性副甲状腺機能亢進症による骨からのリン放出の増大による血管石灰化を引き起こし、心筋梗塞や脳梗塞の危険性が高まる。つまり長期の血中高リン状態の回避が腎不全を含むCKDに伴う骨ミネラル代謝異常のリスクマネジメントを考える上で重要な課題である。そこで、本研究はリン摂取によるPTH初期分泌機構およびそのCKDに伴う骨ミネラル代謝異常発症 (CKD-MBD) における意義を解明し、臨床現場におけるリンを中心とした新しい栄養管理法の確立を目指すものである。初年度の研究で明らかになったことを以下に示す。 全身麻酔下でラットの大腿静脈にカテーテルを留置し、濃度の異なるリン酸水溶液を胃内投与後に採血した。その結果、血中PTH濃度は高濃度のリン酸水溶液を投与した群では対照群と比して有意に上昇することが明らかになり、高リンによるPTHの分泌には二相性が見られた。次に、PTHの二相性のうちの初期分泌がリン酸投与した後、非常に早い段階で見られたことから、この原因として神経性因子を疑い、胃噴門上部をカプサイシン処理による迷走神経遮断でそれを検証した。その結果、予想通り迷走神経遮断すると高リンによるPTHの二相性のうちの初期分泌は消失した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、動物で高リンによるPTH分泌の変動を経時的に観察する実験系およびカプサイシン処理による迷走神経遮断実験系を確立した。さらに、高リンによるPTH分泌には二相性が存在すること、さらにそのうちの初期分泌には神経性の因子が関与していることを明らかにしたので、実験は概ね順調であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今回、高リンによるPTH分泌には二相性が存在し、それには神経性の因子が関与することが明らかとなった。次年度では、この高リンによるPTH初期分泌に腸管でのリン吸収を担うトランスポーター (Npt2b) が関与しているかどうかを評価するため、Npt2b阻害剤であるホスホノギ酸 (PFA) を用いて解析を行う。さらに、高リンによるPTH初期分泌にNpt2bが関わっていた場合、他の起電性Na依存性トランスポーターに関しても検討する。また、CKD発症でみられる慢性的な高リン血症状態においても単回投与の高リンに対するPTH分泌の二相性が見られるかどうかを評価する。
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Research Products
(1 results)