2015 Fiscal Year Annual Research Report
過去100年間にわたる森林棲大型菌類のボルネオ島北部における分布変遷
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15H06445
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
山下 聡 徳島大学, 生物資源産業学部(仮称)設置準備室, 講師 (70450210)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 多孔菌類 / 東南アジア / 分布推定 |
Outline of Annual Research Achievements |
東南アジア熱帯地域は生物多様性の保全上きわめて重要な地域である。その一方で,人為活動等による環境の改変により,生物の生息地の減少などが引き起こされ,生物多様性が危機的状況にある。多孔菌類は熱帯雨林において木材分解者として重要な役割を担っており,これらの分布状況を明らかにすることが必要とされているものの,菌類の広域的な分布に関する知見は知られていない。マレーシア国サラワク州の森林局には1950年代から現在に至るまで州内の各地で採集されてきた多孔菌類の標本が保管されている。そこでこれらの標本データを用いて空間分布を推定できないかと考えた。収蔵標本の整理が不十分であったため,標本の再同定とデータベースの作成を2015年7月から行った。今のところ,少なくとも1890点の標本があり,65種が含まれることを確認した。 優占的な3種,Amauroderma subrugosum,Ganoderma australe,Pycnoporus sanguineusについて,MAXENTを用いてボルネオ島北部における分布推定を行ったところ,3種とも沿岸部に分布が集中しているものと推定された。この結果は,これまでの採集地点がサラワク州の沿岸部に偏っており,内陸部での調査がほとんど行われていない事に起因するためと考えられた。 本研究の成果について,日本生態学会大会において発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は,当初の計画通りに優占種の抜き出しを終え,分布推定まで行うことができた。この結果について,予定通りに学会での発表を行った。また,希少種についても多くの標本については標本庫からの抜き出しを終え,このうちの一部のサンプルについては種同定を終えることができた。 最終年度では,標本庫に未整理のまま残してある標本について,必要に応じて再同定を行う予定である。 なお、優占種の分布推定については,論文化を進める予定であったが,予想以上に標本採集地に偏りが見られたため,解析方法をよく検討する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究ではサラワク州森林局のResearch, Development & Innovation Division(以下,RDID)において,応募者とRDIDのカウンターパートであるHabibah Salleh氏および同氏のスタッフらと,標本整理とデータベースの電子化を行っている。昨年度は優占種のデータベース化を終えたので,本年度は希少な標本についても同様の作業を進め,データベースの電子化を完了させる。そのために,本年度の前半中にRDIDに残る未整理の標本を整理し,必要に応じて再同定を行う。本年度の半ば過ぎまでにデータベース化を終えるとともに,RDIDの標本情報から東南アジア熱帯地域における多孔菌類の多様性の分布について論文を執筆する。 なお,昨年度までの成果をふまえ,優占種の分布推定方法を詳細に検討し,論文化を検討する。
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