2015 Fiscal Year Annual Research Report
糖尿病関連歯周炎におけるS100A8の生理的役割と作用機構の解明
Project/Area Number |
15H06451
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
廣島 佑香 徳島大学, 大学病院, 特任助教 (60545143)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | S100A8 / 歯周病 / 糖尿病 / 歯肉上皮細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
S100A8はS100A9と共発現し、炎症マーカーとして歯周病を含む様々な炎症性疾患においてその発現が亢進することが知られている。本研究では、糖尿病関連歯周炎の病態においてS100A8の役割と作用機構を明らかにすることを目的としている。平成27年度は、不死化したヒト歯肉上皮細胞OBA-9に終末糖化産物(AGE)と歯周病原因子(P-LPS)を作用させ、S100A8およびS100A9発現への影響を調べた。結果、ヒト歯肉上皮細胞においてAGEとP-LPSの単独添加あるいは複合添加ともにS100A8およびS100A9の発現増加が認められ、複合添加時は単独時と比べて相乗的な発現増加が認められた。さらに炎症性サイトカインであるIL-6および IL-8も遺伝子、蛋白レベルともに発現増加が認められた。糖尿病関連歯周炎の病態においてS100A8は歯肉上皮にてその発現が上昇することが示唆され、今後発現調節機構などを解析し、S100A8の病態における意義を検討することにより、病態解明および将来の歯周治療に貢献できると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度に予定していた計画に少し変更を加えたため、当初の予定からは若干遅れている。しかし、計画している研究遂行に必要な情報を得るため、検討すべき項目を増やしたもので、研究計画全体としてはその進行に著しい遅延は生じないと考えている。 当初の研究計画では、平成27年度に不死化したヒト歯肉上皮細胞OBA-9に終末糖化産物(AGE)と歯周病原因子(P-LPS)を作用させた状態を糖尿病関連歯周炎の培養モデルとし、さらにS100A8を作用させることによって歯肉上皮細胞の遺伝子発現がどのような影響を受けるか検討する予定であった。しかしながら、ヒト歯肉上皮細胞におけるAGE単独あるいはAGEとP-LPSの複合添加の影響に関して報告した論文がなく、基準となるAGEとP-LPSが細胞に及ぼす影響についての情報を集めるため、まずは内因性のS100A8発現がどのように変化するかについて検討した。結果、ヒト歯肉上皮細胞においてAGEの単独添加あるいはP-LPSとの複合添加ともにS100A8およびS100A9の発現上昇、さらに炎症性サイトカインであるIL-6, IL-8の発現上昇も認められた。今後は計画している実験内容を遂行する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、ヒト歯肉上皮細胞においてAGEとP-LPSの添加で発現が上昇したS100A8のシグナル伝達機構を探る。AGEとP-LPSのレセプターのsiRNAや中和抗体を用いたノックダウン実験を含め、MAPK経路および転写因子レベルで検討を行う。さらに本来の研究計画である、糖尿病関連歯周炎の病態におけるヒト歯肉上皮細胞での遺伝子発現の変化がS100A8の添加の有無によりどのような影響を受けるか検討を行う。遺伝子発現については、炎症性サイトカイン、抗炎症性サイトカイン、抗菌ペプチドおよび自然免疫関連因子などに焦点を当てて、歯肉上皮細胞の防御機構に関与する因子を中心に調べる。また、糖尿病関連歯周炎の病態における歯肉上皮での酸化ストレスを、S100A8の添加の有無により酸化ストレスマーカーを測定することで検討する。上記で得られた結果をもとに、S100A8のシグナル伝達機構について検討を行う予定である。
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