2015 Fiscal Year Annual Research Report
筋骨格ストレスマーカーを用いた日本列島階層社会に関する人類学的研究
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15H06465
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
米元 史織 九州大学, 学内共同利用施設等, 助教 (40757605)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 筋骨格ストレスマーカー / 列島の階層社会形成過程 / 身体活動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、筋骨格ストレスマーカーを用いて、社会の階層化過程に伴い拡大した個人間の格差が身体活動の多様性にどのような影響を与えたかを解明することを目的とする。 今年度は、博物館業務や資料庫の移転との兼ね合いで、長期的な他機関への出張が困難であった、そのため新潟大学への資料調査を来年度に延期し、申請者の所属機関(九州大学総合研究博物館)及び九州大学アジア埋蔵文化財研究センターの古墳時代の古人骨資料の調査を行った。総合研究博物館が所蔵する九州内の老司古墳など古墳時代人骨約50体およびセンター所蔵の志津里遺跡出土人骨に関してはおおむね調査を終えている。九州は古人骨調査を重要視する傾向がかねてより強い地域であるため、古墳時代の人骨が列島内で最もよく保存されている地域である。これらの被葬者は埋葬された墓も様々であり、考古学的な情報も数多く残されている。そのため、古墳時代の身体活動の多様性を列島全域で検討していく際に、最初に検討する地域としては最良の地域といえる。今後、考古学的な情報を加味して九州内の古墳時代の人骨の筋骨格ストレスマーカーの多様性を検討し、階層性との関連を明らかにしていく予定である。また、この結果を基礎として、列島のほかの地域の様相をみることで、地域ごとにどのような違いがあるのかを明らかにしていくことも可能であると考えている。 また、申請者は、自らの所属する博物館の常設展示室をリニューアルし考古資料と古人骨をあわせた展示を2016年度の4月から行っており、自身の研究のアウトリーチ活動の一環としている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は九州大学総合研究博物館の資料庫の移転作業が行われていたため、他機関所蔵資料の調査が例年よりも困難であった。しかし、九州大学総合研究博物館の所蔵する古人骨資料は順調に調査を終えつつあるため、2016年度に他機関への調査を計画的に実行すれば当初の計画通りに古墳時代の古人骨の研究は進展すると考えている。しかし、国立科学博物館所蔵の江戸時代の資料に関しては当初予想していたよりもはるかに保存状態が良好であるため、予定よりも多くの時間を調査に割く必要が生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度で調査を終了する予定であった江戸時代の崇源寺・正見寺の資料の調査が完了しなかったため、2016年度も引き続き行っていく必要がある。2016年度の前期のうちに古人骨所蔵の中心的な機関であり、膨大な数の古人骨資料を有する国立科学博物館の調査を行い、夏季休暇中に新潟大学での調査を行うことを予定している。後期は授業などで長期的な調査へ行くことが困難となる可能性が出てきたため、10月以降は、2015,2016年度の調査成果をまとめた論文作成を開始する予定である。
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