2015 Fiscal Year Annual Research Report
上皮成長因子受容体阻害薬によるざ瘡様発疹における芳香族炭化水素受容体の活性化
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15H06477
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
辻 学 九州大学, 大学病院, 助教 (20423551)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 芳香族炭化水素受容体 / 上皮成長因子受容体阻害薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
悪性腫瘍に対する分子標的治療薬である上皮成長因子受容体(Epidermal Growth Factor Receptor:EGFR)阻害薬は、抗腫瘍効果と示す一方で、皮膚の有害事象の発生の頻度が高い。今回、申請者は、EGFR阻害薬によって生じる代表的な皮膚症状であるざ瘡様発疹の発症の機序の解明とそれに基づいた治療法を確立したいと考えている。具体的には、1)芳香族炭化水素受容体(aryl hydrocarbon receptor:AhR)の活性化によって皮脂が増加すること、2)AhRは転写因子であるNrf2(Nuclear factor erythroid-derived 2-like 2)を活性化し、AhRを介したNrf2シグナルの活性化は毛包(毛穴)の開大と面皰の形成を促進すること、3)AhRシグナルがEGFR阻害薬によって増強する可能性があることに着目し、皮膚の表皮細胞と脂腺細胞のAhRは生体由来のリガンドであるFICZ(6-Formyindolo(3,2-b)carbazole)によって活性化されるが、このAhR-Nrf2シグナルの活性化がEGFR阻害薬によってさらに増強されることで、ざ瘡様発疹を生じるのではないかという仮説を立てた。EGFR阻害薬であるゲフィチニブ・抗EGFR抗体は、表皮細胞・脂腺細胞において、FICZによるAhRの活性化を増強することが確認された。さらに、ゲフィチニブ・抗EGFR抗体はNrf2の発現を誘導し、これはFICZによって増強された。ゲフィチニブ・抗EGFR抗体による皮脂の分泌の増加がAhR-Nrf2依存性であるか調べるために、AhR・Nrf2がノックダウンされた脂腺細胞をゲフィチニブ・抗EGFR抗体で刺激したところ、対照群に較べて皮脂の分泌は減少した。これらの結果を纏めて、ESDR 2015 第45回欧州研究皮膚科学会議で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画に基づき、実験を進めたところ、概ね予想通りの実験結果を得ている。 表皮細胞・脂腺細胞を用いた、抗EGFR阻害薬によるAhR-Nrf2の活性化についての研究は、qRTーPCRによる遺伝子解析、ウエスタンブロットによるタンパク質発現の発現、共焦点レーザー顕微鏡による細胞内局在の解析を複数回終えて、再現性のある実験結果であることが確かめられた。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、1)AhR-Nrf2の活性化がどのように皮脂の分泌に関わっているか、2)Histone deacetylase 6 (HDAC6)阻害薬がAhR-Nrf2の活性化にどのような影響を与えるのか、について表皮細胞・脂腺細胞を用いて研究を行っている。1)に関しては、当初の研究計画に追加して、皮脂の分泌に関して重要とされるperoxisome proliferator-activated receptor (PPAR)ファミリー、Perilipin (PLIN)ファミリーの発現について解析を行い、さらに詳細な分子機構を明らかにしたいと考えている。2)に関しては、HDAC6阻害薬が、AhR-Nrf2の活性化によるCYP1A1, NQO1の発現にどのような影響を与えるか解析を行い、最終的にEGFR阻害薬による皮脂の分泌をHDAC6阻害薬が抑制できるかを検討していく予定である。
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Remarks |
本研究成果は、ESDR 2015 第45回欧州研究皮膚科学会議 にて、ESDR/JSID Young Fellow Collegiality Awardsに選出され、招待講演を行った。
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