2015 Fiscal Year Annual Research Report
膵癌早期発見を目指した十二指腸液中S100タンパク質ファミリーの解析
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15H06482
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
森 泰寿 九州大学, 大学病院, 助教 (50632642)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 膵癌 / 診断マーカー / S100タンパクfamily |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、十二指腸液中S100タンパクfamily測定による膵癌の早期発見の可能性を検討することとした。先行研究で採取されていた検体を利用し、ELISA kitを用いて十二指腸液中のS100A2、S100A4、S100A6、S100A7、S100A11濃度を測定した。対象症例は膵癌群10例、膵IPMN群10例、慢性膵炎群7例、コントロール群4例(生体腎移植ドナーから採取したもの)とした。S100A2は膵癌群、膵IPMN群、慢性膵炎群、コントロール群ともにELISA kitの検出下限以下であった。十二指腸液は採取時にタンパク質分解酵素阻害薬を添加しているものの、S100A2はほぼ分解されている可能性が高いと考えられた。S100A4は有意差は認めなかったものの、コントロール群のみ濃度が高い傾向にあり、膵疾患スクリーニングという観点では有用なマーカーとなる可能性があると考えられた。S100A6はそれぞれの疾患群およびコントロール群間で有意差は認めなかった。S100A7は慢性膵炎群のみ値が小さい傾向にあるものの、IPMN群、膵癌群、腎移植ドナー群間では差は認められなかった。S100A11はそれぞれの疾患群およびコントロール群間で有意差は認めなかった。今回の検討では十二指腸液中S100タンパクfamily測定の膵癌早期発見における有用性を明らかにすることはできなかったが、膵疾患スクリーニング検査としてのS100A4の有用性が示唆された。また、膵癌群におけるそれぞれのS100タンパクfamilyの発現量と予後に関しての検討は今後行う予定である。また、Meloらにより血中のGlypican-1が膵癌の早期診断に有用であると報告された(Nature 523(7559): 177-182)。今後、十二指腸液中のGlypican-1が膵癌早期発見マーカーとして有用かどうかを検討していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
特に問題なく当初予定していた通り、ELISA kitを用いて十二指腸液中のS100タンパクfamilyを測定することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
膵癌早期発見のマーカーとしてはS100タンパクfamilyの有用性は明らかでなかったため、今後は十二指腸液中のGlypican-1が膵癌早期発見マーカーとして有用かどうかを検討していく。また、膵癌群におけるそれぞれのS100タンパクfamilyの発現量と予後に関して検討する。
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