2015 Fiscal Year Annual Research Report
欠損値がある長期記憶過程におけるウェーブレット推定量の統計的性質の研究
Project/Area Number |
15H06525
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Research Institution | Aomori Public College |
Principal Investigator |
七宮 圭 青森公立大学, 経営経済学部, 講師 (20755714)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 経済統計学 / 計量経済学 / 時系列解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、長期記憶過程の代表的なパラメトリック・モデルであるautoregressive fractionally integrated moving average(ARFIMA)モデルに従う観測された時系列データに欠損値がある場合のパラメータの推定問題について、ウェーブレット解析を用いた近似最尤推定量の計算手法の確立とその推定量の統計的性質を明らかにすること、欠損値を無視して推定を行った場合の推定結果への影響を明らかにすること、さらに計量ファイナンスの実証分析で用いられる高頻度データなどの経済時系列データへの応用を目的としている。 平成27年度においては、観測したデータに欠損値あるいは欠測値がある場合の統計的推定手法についての研究、ウェーブレット解析を利用した長期記憶過程の推定手法に関する研究、および長期記憶過程に欠損値がある場合の推定に関する研究の3つの研究分野を中心に先行研究の調査および内容の整理を行った。これらの調査の結果、データを欠損するメカニズムが、データに依存しない完全にランダムに欠損するメカニズム、観測されたデータの依存する確率で欠損するメカニズム、観測されたデータ以外の要素にも依存するメカニズム、と三つに分類されることから、本研究で使用する欠損値がある長期記憶過程に従うARFIMAモデルについては、上記のメカニズムのうちデータに依存しない完全にランダムに欠損するメカニズムを採用することとした。 さらに、分析に使用するモデルが明確に定義されたことから、先行研究の結果を参考にして、ウェーブレット解析を利用した近似最尤推定量の導出とその推定量の統計理論的な性質の解明作業を行った。また、これらの理論的な性質を検証するため、プログラムの作成とシミュレーションによる数値実験を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で述べたように、欠損値を取り扱った統計モデルは欠損のメカニズムが三つに分類され、データに依存しない完全にランダムに欠損するメカニズムを採用することにしたが、平成27年度はこれらのメカニズムの違いが考察するモデルの定義やその性質の解明方法に与える影響などの比較検討に時間がかかった。また、先行研究の文献などの資料の入手等で想定外に時間がかかったため、先行研究の調査と整理作業で大きな遅れが出た。 一方で、使用する欠損メカニズムとモデルが決定した後は比較的順調に作業が進み、年度内に推定量の解析的な性質の研究を行い、その性質を確認するためのシミュレーション用のプログラムの作成と数値実験を行うことができた。 以上のことから、研究作業はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方針として、引き続き先行研究の調査および整理を行うとともに、ウェーブレット解析を利用した近似最尤推定量の導出とその推定量の統計理論的な性質の研究を行い、さらに欠損値を無視して推定を行った場合の推定結果への影響についても理論的な解明を行う。 また、提案した推定量の性質の検証と、欠損値を無視して推定した場合の影響、提案した推定量と先行研究などで提案されている推定量とのパフォーマンスの比較を行うために、理論的な比較だけではなくコンピュータによる数値実験も引き続き計画している。さらに時間的に余裕があれば、経済データなどへの応用として、実証研究も可能な限り行う予定である。 最終的に以上の結果を取りまとめ、ワーキングペーパーや論文等の作成および投稿、学会・研究会などでの研究報告などを考えている。
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