2015 Fiscal Year Annual Research Report
地域社会における土地所有権の内在的制約に関する実証的研究
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15H06526
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Research Institution | Iwate Prefectural University |
Principal Investigator |
平井 勇介 岩手県立大学, 総合政策学部, 講師 (60757524)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | コモンズ / 土地所有権 / 地域コミュニティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、地域社会を対象とした社会学的モノグラフ研究を通じて、人びとが自発的に土地の所有権を制限する社会的条件を二つの事例研究を中心に明らかにすることである。調査は現在も比較検証しながら継続中であるが、現時点では以下の様な知見を得られている。 一つ目の事例地では、第二次世界大戦後からはじまった圃場整備事業(完了は1990年代前半)を通じて、土地所有をめぐる格差が生じてしまった。その格差を解消するために、格差を受けることになった集落内の有志らが、問題となる土地の所有権を制限し、共有地化・組合化して、里山保全やまちづくりへと活動を展開している。この里山保全やまちづくり活動には、集落内の格差を是正することが重要な動機となっているが、その一方で、都市部住民との交流事業に位置づく、諸実践(里山保全やオーナー梨園事業)へと展開している。このように、事例地において、土地の所有権を制限し、土地利用を外部へと開いていく契機には、集落内の土地の格差問題が大きく関連していた。すわなち、土地所有権を自発的に制限する社会的条件の一つとして、地域コミュニティ内の格差是正という条件を実証的に示せたものと考えている。 二つ目の事例地は岐阜県東白川村であるが、調査より白川村へ植林活動を持ちかけた直接の主体である三重県桑名市赤須賀漁業協同組合への聞き取り調査が不可欠という認識にいたった。そのため、残りの研究期間で桑名市赤須賀へ重点的なフィールドワークを実施し、本フィールドにおける冒頭の課題を検討していく予定である。 また、上記の二つの事例とは異なるが、本研究が最終的な目的とするところの、環境保全における多様なアクター間の協働関係の構築に関する成果を暫時的にまとめた。この成果をまとめる過程から、本研究課題についても多く示唆を得られたと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は主に二つの事例研究を中心に進める予定となっている。 岐阜県東白川村の調査においては、重点的にフィールドワークをおこなうポイントが移行することになったため、多少の遅れが懸念される。しかしながら全体としては、もう一方の事例地におけるフィールドワーク、論文執筆にはおおむね見通しがついたため、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
重点的にフィールドワークをするポイントに変更があったため、残りの期間で桑名市赤須賀へのフィールドワークを重点的に進めていく予定である。 以上の変更点以外は、予定通り、地域社会の人びとが自発的に土地の所有権を制限する社会的条件について検討をすすめていく。なお、見通しのついた事例地から、報告・論文化をすすめる。
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Research Products
(1 results)