2015 Fiscal Year Annual Research Report
Weaver症候群の遺伝学的要因と発症メカニズムの解明
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15H06533
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
今川 英里 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 博士研究員 (60579895)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | Weaver症候群 / 全エクソーム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、Weaver症候群の発症メカニズムがポリコーム蛋白質複合体2 (polycomb repressive complex 2: PRC2) 蛋白質異常に由来することの証明を目的とし、当該年度では既に遺伝学的手法(全エクソーム解析)により単離されたPRC2関連遺伝子 (A・B遺伝子) の新生突然変異に対して、免疫沈降法を用いたPRC2蛋白質機能解析の遂行、および全エクソーム解析による新規のPRC2関連原因遺伝子の探索を施行した。当該年度の補助金は、主に上記の研究を遂行するための試薬・物品の購入費に当てられた。
PRC2関連遺伝子A・B遺伝子における蛋白質機能解析では、変異蛋白質がある複合体の形成を障害するか否かの結合能の解析を免疫沈降法にて施行した。結果、野生型と変異型の組換え蛋白質間に差はみられないことが明らかになった。このことは同定された変異はPRC2複合体の結合能は正常であるが、一方で機能面の異常を示す可能性があることが推測され、変異のPRC2蛋白質への影響を考える上できわめて重要な結果であった。この見解を広げ、今後PRC2複合体が有するヒストンメチルトランスフェラーゼの酵素活性の測定により変異の病原性を評価することとしている。
さらに当該年度、81症例の過成長症候群患者から得られた全エクソーム解析データを用いた新規のPRC2関連原因遺伝子の探索において、報告のある既知遺伝子による変異が多数 (81症例中14症例) 同定された。全エクソーム解析を行う上で、既知遺伝子の検索は最初に行う工程であり、解析症例の既知変異の割合が明らかにされつつあると考えられる。この過程を経て新規遺伝子変異がより強く疑われる症例の集積が可能となったことから、現在未解決症例の中での共通変異の探索へ進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度に予定していたPRC2関連A・B遺伝子における蛋白質機能解析では、変異導入した組換え発現ベクターの作成、および変異蛋白質の発現をWestern Blot解析により確認する工程を終了した。さらに発現させた組換えA・B蛋白質 (野生型/変異型) と組換えPRC2関連蛋白質の結合能を免疫沈降法の実験に進み、結果、野生型と変異型の組換え蛋白質間に差はみられないことが明らかになった。同定された変異がPRC2複合体の結合能に影響を及ぼさないことが証明されたことは、新しい事実であり変異の病原性を考慮する上で有益な情報となる。
さらにWeaver症候群を含めた過成長症候群81家系の全エクソーム解析は、既にサンプル調整、シークエンス、in silicoによる変異情報解析が終了している。各症例は過成長症候群の13既知遺伝子(NSD1, NFIX, EZH2, CDKN1C, KCNQ1, NLRP2, PHLDA2, GPC3, GPC4, OFD1, DIS3L2, PTEN, BMPR1A) の変異検索を行い、結果、14症例でこれらいずれかの遺伝子変異が検出された。抽出されたすべての変異はSanger法により確認されている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策については、まず平成27年度の免疫沈降実験でPRC2複合体の結合能に関して野生型と変異型の組換え蛋白質間に差はみられない結果を基に、PRC2複合体の機能の一つであるヒストンメチルトランスフェラーゼ活性が保たれているか否かの検証に進むこととしている。ヒストンメチルトランスフェラーゼ活性測定実験には、Tet発現誘導システム (Clontech) を用いる予定である。
また平成27年度より引き続き、Weaver症候群を含めた過成長症候群81家系に対して得られた全エクソーム解析データより、新規PRC2関連遺伝子変異の検出を推進していく。現在のところ一塩基変異・短い挿入/欠失の病的変異の抽出の確認が終了しているが、今後遺伝子のコピー数異常の可能性を考え、全エクソーム解析結果を用いたXHMM解析やNord解析を行っていく。XHMM解析は200kb以上、Nord解析は単一エクソンレベルの欠失・重複を効率よく検出できるため、感度良くコピー数異常を算出していく計画である。
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