2015 Fiscal Year Annual Research Report
小児がん患児の親が闘病体験を意味づけていく構造の解明
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15H06561
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Research Institution | Tohoku Bunka Gakuen University |
Principal Investigator |
入江 亘 東北文化学園大学, 医療福祉学部, 助手 (60757649)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 心的外傷後成長 / Post traumatic Growth / 小児がん / 親 / 意味づけ / Meaning-making / スピリチュアリティ / 心的外傷後ストレス症状 |
Outline of Annual Research Achievements |
ストレスフルな体験の後に肯定的な意味づけを見出すことがあるとの報告は,心的外傷後成長(以下 PTG)の概念から近年注目され,その後のストレスに対する適応力を高めると言われている。しかし強い外傷体験を経験するとされる小児がん患児の親の実態はほとんど明らかでない。そこで本研究では,小児がん患児の親が子どもの闘病体験に対して行う意味づけとそれに影響を及ぼす要因を明らかにすることを目的とした。 まず,PTGと関連が示されているSpiritualityを調査項目とするため,世界標準的に使用されているSpirituality尺度の非患者版であるFacit-Sp-non-illnessの日本語版を作成のうえで,健常な成人200名を対象とした調査にて信頼性・妥当性を検証した。12項目の探索的因子分析の結果,原版と同様の2因子構造が確認され,尺度の信頼性,妥当性が確認された。 第二に,小児がんの患児の親と慢性疾患患児の親に横断的質問紙調査を行った。回答を得た小児がん患児の親86名と慢性疾患患児の親46名の回答からPTGの実態とその要因を検討した。PTGの平均は小児がん群で47.0点,慢性疾患群で45.6点と両群とも40点台中盤を示した。PTG包括モデルを基にした小児がん群の親における共分散構造分析では適合は示されなかった。適合モデルでは,中核的信念の揺らぎとSpiritualityがPTGに直接効果を及ぼしていた。一方最近の意図的反すうはPTGに影響を与えず,Spiritualityを低下させていた。さらに,PTSSの程度はPTGに影響しなかった。小児がん群は中核的信念の揺らぎがPTGに最も強く影響していたが,慢性疾患群ではPTSSに影響していた。また慢性疾患群のみ最近の意図的反すうがPTGに直接的な影響を与えていた。疾患ごとにPTGに影響を与えている要因が異なる可能性が明らかとなっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度目標としていた尺度の信頼性・妥当性の検証と横断調査を計画通り実施することができ,分析を進める段階に入っているため。Facit-Sp-non-illness日本語版に関しては学会発表,論文掲載に至ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
まず横断調査の分析を進め,PTGに関連する要因について分析し精錬する。平成28年度は横断調査を基盤とした小児がん患児の親からのインタビュー調査を予定している。インタビューガイド作成においては先行研究及び横断調査の結果を踏まえ吟味し構成する予定である。インタビュー調査から,より詳細なPTGに至る構造を捉えることが可能となると考える。また,日本人の傾向として自身のPTGを述べることが難しい点が報告されており,横断調査において対象の家族に生じたPTGについて尋ねる項目を設けた。この点に関する質的分析も並行して進めていく。
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Research Products
(5 results)