2015 Fiscal Year Annual Research Report
文と文のつながりに基づく英文読解メカニズムの解明:因果的関連と意味的関連の比較
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15H06571
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Research Institution | Kyoei University |
Principal Investigator |
名畑目 真吾 共栄大学, 教育学部, 講師 (60756146)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 外国語教育 / リーディング / 心理言語学 / 一貫性 / 潜在意味解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は英語学習者が文と文をつなげてテキストを理解するメカニズムを,文間の因果的・意味的関連という2つの要素に着目して明らかにすることである。本年度ではまず,実験材料の作成と選定を行った。実験材料は,先行研究で用いられたものを英語学習者向けに作成した2文1組のテキストであり,因果的・意味的関連の高低が操作されている。文間の因果的関連の高低を確証するため,日本人英語学習者を対象として因果的な関連度について主観的な判断を行わせる予備実験を行った。また,意味的関連については,実験材料に対してウェブ上のアプリケーションを用いて潜在意味解析を行い,文間の意味的関連度の高低を数値により判断した。このような過程を経て,実験材料の作成と選定を行った。 次に本年度では,作成・選定した実験材料を用いて2つの実験を行い,文間の因果的・意味的関連度が英語学習者のテキストの一貫性の知覚に与える影響を検証した。合計で約150名の日本人大学生が実験材料を読解し,それぞれのテキストがどの程度一貫性を持っているかを5段階で評定した。一貫性判断の評定値について統計的な分析を行った結果,従来指摘されてきた文間の因果的関連だけでなく,意味的関連も英語学習者のテキストの一貫性の知覚に影響していることが明らかになった。また,意味的関連度の影響は学習者の英語習熟度と関連しており,習熟度が低い学習者の一貫性判断は習熟度が高い学習者と比べて意味的な関連度に影響を受けやすいことが示された。 この結果は,大学生レベルの学習者の英文理解においては文間の因果的な関連に加え,意味的な関連度に基づいた理解が行われている可能性を示唆するものである。文間の意味的関連度の影響を今後の研究で追及する意義を示した点で,本年度に得られた成果は重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時の計画どおり,実験材料の作成と選定,及び一貫性の知覚を検証する実験の実施を行うことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
まず,前年度の研究成果について関連学会で発表し,論文の執筆・投稿も随時進めていく。さらに,英語学習者の文間のつながりの理解を直接的に検証するために,学習者の英文読解後のテキスト記憶を検証する実験を行い,前年度の研究結果と統合する。
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