2015 Fiscal Year Annual Research Report
『うつほ物語』における国学者の学問の研究――板本の書入から未詳語彙を解明する
Project/Area Number |
15H06579
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
武藤 那賀子 学習院大学, 付置研究所, 研究員 (40759495)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | うつほ物語 / 書入れ版本 / 書誌学 / 国学者 |
Outline of Annual Research Achievements |
当研究が今年度に実施する予定は以下の三点であった。 ①現存する書入れのある『うつほ物語』板本の把握と、書入れ箇所の整理。 ②「凡例」の書入れの翻字及び整理。 ③公開されておらず、かつ未調査の『うつほ物語』三十冊板本がないかを探し、所蔵機関に赴いて調査する。 ①については、各機関が所蔵する『うつほ物語』三十冊板本の書入れ位置を一覧表にした。『うつほ物語』板本は、資料によって巻順や丁数に違いがある。特に、丁数は、丁と丁の間に別紙を挟んで綴じなおしている場合もある。これらの情報を加えながら、書入れ情報を有効活用できるような一覧表を作成しつつある。②については、書入れの凡例をもつ資料を複数見つけ、その翻字を行なって比較した。凡例をもつ資料は、全て同じ凡例を基にしている。このことから、凡例のある書入れ版本は、全て関わりがあることがわかった。なお、凡例の詳細を見てゆくと、どの国学者の書入れを参考にして書入れているかがわかる。③については、ネットや紙焼き資料として公開されていない資料がノートルダム聖心女子大学にあったため、現地に赴き、書誌をとった。この資料は、他の資料にはない詳細な書入れがあった。また、現地で参加した研究会で見た『宇津保愚見』も、当研究にかかわる可能性が高いこともわかった。上記三点については、滞りなく進んでいる。しかし、①の書入れ箇所の整理にあたって作成している一覧表については、全ての丁の最初の数文字を翻字しているため、表としては未完成である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各機関が所蔵する『うつほ物語』版本の書入れ位置を一覧にしているのだが、実際に作成してみると、活用するという点において不十分であると感じた。それは、ネット公開されている『うつほ物語』書入れ版本が、所蔵機関によって巻順や画像番号に違いがあり、かつ、丁数も見えないことが多いためである。この状況を改善するために、各丁の最初の数文字を翻字し、一覧に入れる必要が出てきた。このために、一覧作成が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
現存する書入れのある『うつほ物語』板本の書入れ箇所を一覧にした表を完成させ、活用できるものにする。また、学習院大学本、早稲田大学本、国会図書館本、斯道文庫本の書入れをすべて翻字する必要はなく、首巻「としかげ」巻の比較のみで十分であることがわかった。このため、一覧表を作成したのちは、未詳語彙の検討を行なう。
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