2015 Fiscal Year Annual Research Report
子宮内における個体発生後期の血管新生メカニズムの解析
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15H06591
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
浅田 礼光 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (20757439)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 血管新生 / エリスロポエチン |
Outline of Annual Research Achievements |
1) 胎児期後期におけるhypoxia inducible factor (HIF)を安定させた場合に、血管にどのような影響が影響が出るかを調べた。HIFを安定化する薬剤としてprolyl hydroxyrase (PHD) inhibitorを使用した。妊娠マウスに対し、E 11.5からE 18.5までの8日間に渡り、PHD inhibitor 100mg/kg/dayを妊娠母体に腹腔内注射を行った。出生日(P0)および10週齢でマウスを解析した。脳、心臓、肺、肝臓、腎臓において血管内皮の定量化を行うために血管内皮マーカーであるCD31, VEGFR2, Ti2をrealtime PCRで評価した。いずれの臓器においても、血管内皮マーカーのmRNA発現量は有意な上昇を示しておらず、 臓器における血管密度の上昇は起きていないと考えられた。エリスロポエチン(EPO)発現は変化していた。 2) 早産が臓器発達に与える影響には未知な点が多い。早産児の腎臓においてはネフロン数の低下が起きる事が知られていたが、血管新生への影響は知られていなかった。研究代表者は、早産児として出生した患者のなかに、思春期にEPO高値のために多血症を発症する場合がある事を見出した。早産児はネフロン数減少のため、巣状糸球体硬化症を発症し尿タンパクを呈するようになる。研究代表者は早産児として出生し、思春期に多血症を認め、蛋白尿の原因精査のために腎生検をされた患者2名の生検検体における血管密度評価を行った。血管内皮マーカーCD31およびCD34で免疫染色を行ったところ、満期産児として出生し蛋白尿を呈した患者の組織に比べ、血管内皮要請領域の顕著な低下が認められた。早産児では早産により血管新生が阻害され、組織低酸素からEPO産生が増加し多血症に至ると考えた。本研究は胎児期の血管新生が重要であることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の最大の成果は、臨床検体を用いることにより、早産児では腎臓の血管新生が障害され、血管密度が低下していることを示すことができたことである。これは早産による早期の子宮内環境の喪失が血管新生を損なうことを示している。本成果は予定外に得られた知見であるが、新生児医学および腎臓学において、臨床的にも学問的にも非常に意義深いものである。本来、臨床検体(腎生検検体)は将来的に検討する予定であったが、入手予定が未定であったため予定していなかった。しかし、他の医療機関で採取された腎生検検体を入手することが出来、予定外に評価するチャンスを得ることができた。そのため、培養実験や動物実験より臨床検体の解析を優先し、早産と血管新生の関係を研究することとなった。 発生過程における酸素濃度およびHIFの効果を検証するため動物実験を予定より早く開始した。PHD-inhibitorを発生後期に投与することで血管への影響を調べた。現時点では血管新生に対する有意なデータは認めていないが、酸素濃度を反映するEPOの発現量の変化を確認しているため、組織の酸素濃度には影響が出ていると考えられる。引き続き、組織学的な解析を続けていく。 平成27年度に予定していた細胞培養による実験は、実験系が未だ確立できておらず、平成28年度の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
PHD-inhibitorを投与したマウスの各臓器における組織学的検討を行い、構築変化、血管の分布の変化などが存在するか評価する。 平成27年度に、早産では腎臓の血管新生が阻害されていることを見いだしているため、マウスの早産モデルあるいは定出生体重児モデルにおいてもPHD-inhibitorの効果を検証していく予定である。 平成27年度に予定していた細胞培養実験(臍帯静脈血管内皮細胞における低酸素やエリスロポエチンの効果の検討など)は、平成28年度に実験系の確立を行い、検証していく予定である。
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