2015 Fiscal Year Annual Research Report
糖尿病網膜症における神経変性に伴う視機能低下を運動によるAMPK活性化で制御する
Project/Area Number |
15H06594
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
鴨下 衛 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (50528552)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 糖尿病 / 運動 / 網膜神経保護 / 網膜電図 / 糖尿病網膜症 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は糖尿病による網膜神経障害のモデルとして2型糖尿病モデルマウスであるdb/dbマウスを用い、視機能変化が起きる週数を把握するために経時的に網膜電図を測定した。その結果16週齢において、視細胞の杆体細胞の機能を反映するscotopic ERGのa波、b波、op波の減弱がみられることを確認した。次にトレッドミルによる運動の強度を過去の文献を参考にしながら条件を設定した。そしてdb/dbマウスおよびコントロールであるm/dbマウスを8週齢から16週齢まで、週5日、10m/minの速度で、第1週は10分間、第2週以降は20分間、計8週間行い、その時点でのERGによる視機能評価を行った。結果はscotopic ERGにおいてa波、b波、op波がdb/dbマウスの非運動群で振幅低下がみられたが、運動群では有意に振幅が維持されていた。なおm/dbマウスでは非運動群、運動群での違いは見られなかった。また体重も運動開始後8週目においてdb/dbマウス運動群は非運動群と比較し、有意に減少していた。しかし血糖値に運動による変化は見られなかった。次に我々は網膜視細胞の錐体機能を評価するため、photopic ERGを施行した。こちらもdb/dbマウスでは16週齢で低下がみられることを確認したが、運動群では有意に維持されていた。次に16週齢におけるそれぞれの群の網膜の形態変化を、組織切片を作成しHE染色にて確認した。すると16週齢のdb/dbマウスにおける視細胞層の減少や短縮など、明らかな変化は認めなかった。そこで今回の視機能変化の原因のメカニズムを追及するため、今後はより詳細な神経変化を観察するために、視細胞、双極細胞、水平細胞、シナプスなどの神経細胞を免疫染色し、その変化を観察する。また網膜のエネルギー代謝に関してAMPK、NADのレベルの変化や血液のインスリン濃度などにも着目し、さらなる分子メカニズムを解明する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度我々はdb/dbマウスによる運動モデル作成に成功し、トレッドミルによる有酸素運動による網膜神経保護効果をERGにて確認した。現在その分子メカニズムに関して追及するため、網膜組織切片、たんぱく質、RNAサンプルおよび血液サンプルを採取し、研究を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
16週齢のm/db,db/dbマウスの運動群、非運動群における、網膜の形態変化を組織切片を作成しHE染色にて確認したところ、db/dbマウスにおける視細胞層の減少や短縮など、明らかな変化は認めなかった。そこで今回の視機能変化の原因のメカニズムを追及するため、今後はより詳細な神経変化を観察するために、視細胞、双極細胞、水平細胞、シナプスなどの神経細胞を免疫染色しその変化を観察する。またシナプトフィジンやBDNFなどの神経細胞の成長や生存に関わる因子、網膜のエネルギー代謝に関してAMPK、ATPやNADの測定、血液のインスリン濃度などを測定し、さらなる分子メカニズムを解明する予定である。
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Research Products
(2 results)