2015 Fiscal Year Annual Research Report
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15H06595
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Research Institution | Kokugakuin University |
Principal Investigator |
安田 恵美 國學院大學, 法学部, 講師 (90757907)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 高齢受刑者 / 自由刑 / 社会参加 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、日本国内の高齢犯罪者・受刑者・出所者の実態を把握し、問題状況を洗い出すための作業として、刑務所内での処遇、出所から社会に生活基盤を作っていくまでの支援を行っている諸機関に対するヒアリング調査を主に行った。 同調査から明らかになったのは、①刑務所を出所する際の医療・福祉ニーズの多様性・複合性と、彼らに対する処遇の困難さ、②多数回累犯者であっても、釈放後社会の中で自分の「居場所」を見出すことができた高齢者ほど、密な支援がなくとも、安定して生活を送っているという点であった。そこから、社会参加に向けた生活支援が高齢者の場合には一層重要であることについて確認することができた。 その一方で、統計上は、地域生活定着支援センターの特別調整による支援や、更生緊急保護による支援を受けない高齢出所者も少なからずいるはずであるが、彼らの実態については、本年度実施した支援者に対するヒアリング調査やある一定の地域の地域包括センターに対するアンケート調査からは明らかにならなかった。 また、高齢犯罪者に対する自由刑の意義について考察するにあたり、高齢受刑者に対する早期釈放制度を創設してきたフランスを比較検討するために、同国における高齢犯罪者に対する刑罰の適用と社会参加に向けた支援の実態に関する調査を実施した。 刑務所職員、保護観察官、そして刑罰適用裁判官に対するヒアリングを通して、重大な犯罪のケースであっても、高齢受刑者に対しては早期釈放を積極的に適用し、社会で適切な支援につなぐことの重要性が刑事政策に関する実務に浸透しつつあることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の基礎となる、高齢犯罪者・受刑者・出所者の実態について、当初の予定通りのペースで支援者、刑務所等にヒアリング調査を実施することができた。当初は想定していなかったものの、当事者にも話を聞くことができた。 その一方で、地域包括センターおよび救護施設に対するアンケート調査とそれに基づくヒアリング調査は計画通りに進まなかった。 また、フランス調査においても、当初は民間団体等を予定していたが、刑務所職員、保護観察官、刑罰適用裁判官といった刑事政策に関わる実務家の話を聞くこともでき、現場における高齢受刑者に対する刑の運用状況および、刑のあり方についての考えを聞くことができた点で当初想定していたよりも、実り多き調査となった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度中に実施した、ある地域における地域包括センターおよび一部の救護施設に対するアンケート調査を集計し、それに基づくヒアリング調査を実施することにより、高齢出所者の社会復帰までのプロセス、あるいは再犯までのプロセスに関するデータを収集したい。また、刑務所における高齢受刑者処遇についても、各施設において様々な取組を行っているため、それらについても調査を行う予定である。 また、フランスにおいては、平成27年度中の調査において、高齢犯罪者に対する刑罰のあり方については行刑局にヒアリングをした方が良い旨の助言を実務家等から受けたため、他の高齢受刑者を多く収容している刑務所等と合わせて実態調査を実施する。 それらの調査研究の結果を踏まえながら、高齢受刑者に対する自由刑の意義について「社会参加」および、それに基づく「社会復帰」、「再犯防止」という観点から理論的に整理することとする。
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