2015 Fiscal Year Annual Research Report
職場いじめ対策としての職場環境配慮義務と行為規範の確定―イギリス法からの示唆―
Project/Area Number |
15H06618
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
滝原 啓允 中央大学, 法学部, 助教 (70757616)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 社会法学 / 職場いじめ・ハラスメント / 労働契約論 / 付随義務論 / イギリス法 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年深刻化する職場いじめ・ハラスメント問題について、契約上の責任を使用者(企業)に問う場合、職場環境配慮義務違反が問題となり得るが、その義務内容は必ずしも明らかでない。そのため、職場いじめ・ハラスメントの文脈において同義務が十分に活かされているとは必ずしもいえず、その内容(行為規範)の確定が理論上ないし実務上の課題として認識されている。よって、本研究は同義務内容の確定を目的とする。かかる目的を達成するため、本研究は、職場いじめ・ハラスメントにつき複数の法的アプローチを有し先進的なイギリスを比較法研究の対象とする。研究代表者においては、これまで職場いじめ・ハラスメントに係る同国制定法の研究を積んでいるが、本研究ではコモン・ローにおける相互信頼(mutual trust and confidence)義務にも着目しつつ、具体的な行為規範としての「職場における dignity 方針」を参照することで示唆を得る。 当該年度において、研究代表者は、相互信頼義務に係る研究で著名なDouglas Brodie、イギリスにおいて主導的な法学研究者であるHugh Collinsらの論文等を渉猟するとともに、職場におけるdignity方針の雛形収集に努め、それらの翻訳・分析・考察を行った。Collinsの文献を理解する際には、法学分野以外における諸研究の実績をも踏まえる必要があったため、適宜組織論等における議論を参照した。さらに、日本法における職場環境配慮義務についても、最新の裁判例に関し概括的な研究を了し、あるいは同義務のこれまでの展開を振り返るなどした。 これらの研究実績の一部は、学術誌等において公表し、あるいは研究会において報告するなどした。これらを踏まえ、次年度5月には、日本労働法学会の大会においてミニ・シンポジウム報告をなすこととなっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的を達成するために不可欠なイギリス法における相互信頼義務と日本法における職場環境配慮義務とに係る研究に関しては、当該年度において、一定の進捗をみた。これは、以下の三点を理由とする。 すなわち、第一に、労働法分野を専門領域とするイギリス人研究者やイギリス政府関係者と直接意見交換をしたことで、文献だけでは得られない諸情報を得ることができた。第二に、次年度における学会報告のため、ハラスメントに係る研究会が組まれ、それを幾度も重ねたことにより、本研究を批判に晒し鍛錬することができた。第三に、社会法学以外の他分野研究者と直接接触するなどして、本研究の正確性を検証することができた。 当該年度における研究成果を基礎とし、次年度において研究全体のとりまとめを行うが、十分な成果が得られる見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、当該年度になしたイギリス法に係る考察の検証をしつつ、日本法への示唆を得る。その際には、日本における職場環境配慮義務の歴史と展開を再確認する必要が生じるであろう。よって、研究代表者において既になした職場環境配慮義務に係る研究を振り返りつつ、日本労働法学会や諸般の研究会で報告をなすことで本研究の検証を進める。当然にして、研究課題に係る文献は出続けているため、イギリスの文献及び日本の文献を追加的に渉猟することとし、それに対し必要な考察をなす。研究の成果は適宜学術誌に公表する予定である。
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Research Products
(3 results)