2015 Fiscal Year Annual Research Report
モデル環境下での培養実験による亜硝酸動態の制御メカニズム解明
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15H06621
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
黒岩 恵 中央大学, 理工学部, 助教 (00761024)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 森林土壌 / 窒素循環 / 硝化 / 亜硝酸 / 15Nトレーサー |
Outline of Annual Research Achievements |
従来、土壌からの亜硝酸イオン(NO2-)の回収には、pHを調整したKCl溶液を用いる必要があることが指摘されている(Stevens and Laughlin, 1995)。ところが、近年あらたに、これまでのKClによる抽出はNO2-濃度を過小評価しており、水による抽出が少量の土壌からのNO2-の回収と測定に適するとの報告がなされた(Homyak et al., 2015)。これを受け、当初予定を変更し、森林表層土壌からの無機・有機態窒素(NO2-・NO3-・NH4+・溶存有機態窒素)の抽出溶媒と抽出時間の再検討を行った。抽出溶媒には水とKCl(pH調整あり・なしの2種)を用い、抽出は10, 30, 60分間行った。また、窒素安定同位体でラベルされたNO2-を抽出溶媒に添加することで抽出中のNO2-の生成と消費について評価した。 抽出液中のNO2-濃度は水、pH調整済みKCl、KClの順に低下し、Homyakらの報告と矛盾しなかった。また、添加15NO2-の回収率は10分間の抽出では溶媒間で大きな差異が見られなかった。これらの結果は、NO2-測定において水抽出が有用であることを支持した。一方で、試供土壌を15NO2-を添加した水溶液で抽出した場合、抽出時間に依存したNO2-濃度の増加と同位体比の減少が見られたが、オートクレーブで滅菌処理を行った土壌を試料とした場合、濃度と同位体比の変化が見られなかった。このことから、水抽出の操作中に生物的なNO2-の生成と消費が同時に生じることが示された。速度論的な解析から、抽出操作中のNO2-プールの滞留時間は非常に短く、土壌中に元々存在するNO2-の回収は困難であると考えられた。KClを用いた場合、抽出中のNO2-生成速度はより小さいことが事前の研究で明らかになっており、低濃度のNO2-分析ではKCl抽出を行う必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
NO2-抽出法について年度中に重要な報告がなされたため、当初予定していた培養実験を変更し、NO2-抽出法の見直しを行った。NO2-は化学的・生物的に消費されやすい化学種であるために、抽出法自体が確立されていない。したがって、どのような手法を用いて抽出や測定を行うかが結果を解釈するうえで極めて重要である。本研究の目的を果たすうえで、土壌培養実験に先んじて最適な抽出条件を設定することが、科学的に重要であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度に実施を予定していた、含水率を変化させた土壌培養実験に着手する。東京大学千葉演習林にて試料の採取を8月に行うことを予定している。全長100mの斜面プロットにおいて、斜面の上部、中部・下部に分け、それぞれから表層土壌(0-10cm)を採取し、培養実験の試料とする。8-11月にかけて培養実験を行い、2週間ごとに15NO2-添加実験と土壌理化学性・遺伝子解析のための試料の回収を行う。土壌化学分析は培養実験と並行して行い、硝化微生物(AOA, AOB, NOB)の硝化反応を触媒する酵素遺伝子の定量を培養実験終了後に行う。12-3月にかけて、データの取りまとめを行う。
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