2015 Fiscal Year Annual Research Report
地方分権時代における不登校支援の再編――福祉・教育の連携モデルの探求
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15H06701
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Research Institution | Tokyo Jogakkan College |
Principal Investigator |
樋口 くみ子 東京女学館大学, 国際関係学部, 講師 (00758667)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 不登校 / 貧困 / 教育と福祉の連携 / 行政 / 教育支援センター / 適応指導教室 / 教育保障 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は地方自治体が設置運営する教育支援センター(適応指導教室)を対象に、地方分権時代における不登校の公的支援の再編のあり方を解明することにある。この目的のもと、平成27年度は以下の2つの課題に取り組んだ。 (1)市町村合併が不登校支援に及ぼす影響 まず、市町村合併の進展が自治体の適応指導教室再編にどのように影響を与えているのかを分析すべく、47都道府県を対象に質問紙調査票を送付し、適応指導教室を設置している自治体の照合調査を行った。調査設計にあたっては、2007年に筆者が同一の対象に実施した調査と同じ方法を用い、経年比較が可能になるようにした。未回収の自治体については電話調査を行った。調査の主な成果として、自治体規模が大きいほど適応指導教室を設置する傾向にあること、市町村合併の影響としては旧自治体が設置していた適応指導教室を引き続き運営する傾向にあり、合併を経験していない自治体よりも教室数が増加することなどが浮かび上がってきた。他方で合併を機に適応指導教室数が減少する場合も僅かながら見られる。その原因については今後も引き続き分析を進めていく予定である。 (2)不登校支援の再編の力学に関する事例調査 自治体によって不登校支援の再編のあり方は多様かつ複雑であることが想定されるため、ここでは事例調査をもとに再編にかかわる諸要素を丁寧に把握することを試みた。具体的には異なる不登校支援を構築している自治体の支援の背景について、すでに実施したインタビュー調査データと、市町村合併をはじめとした行政資料の収集・分析を進めてきた。また、不登校支援や、不登校に対する人々のまなざしの変容に関しても整理を進め、日本社会病理学会監修の『関係性の社会病理』にて「不登校」の章を分担執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「おおむね順調に進展している」と評価したのは、以下の理由からである。第一に、当初の計画上で予定していた二種類の調査(47都道府県を対象にした質問紙調査と不登校支援の再編の力学に関する事例調査)を実施できた点が挙げられる。前者の調査は、2年目に実施する質問紙調査の調査対象を選定する際に用いる自治体リストの作成も兼ねていたため、今後の計画の遂行に必要な準備をひとつ終えたことになる。他方で、後者の調査は、当初の予想以上に多岐にわたる資料を収集する必要があることが判明したことに加え、自治体によっては図書館の開館時間が少なかったり資料が分散していたりと、資料収集に予想以上の時間を要しており、現在も調査を進行中である。しかし、すでに収集した資料については分析を進めており、当初の計画通り、平成28年7月にオーストリアで開催予定の第三回国際社会学会(Third ISA(International Sociological Association)Forum)の要旨査読を通過した。また、事例調査の資料収集と分析を2年目の11月までに終えることができれば、計画通りに全国規模の質問紙調査を実施することは十分に可能である。これらの点をふまえて、以上の評価に至った。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、以下のように研究を進めていく。まず、課題1「市町村合併が不登校支援に及ぼす影響」の成果については、調査対象機関への報告書送付と、『<教育と社会>研究』への寄稿を予定している。課題2「不登校支援の再編の力学に関する事例調査」については計画書の予定通り、7月10日~14日にかけてオーストリアのウィーンで開催される第三回国際社会学会議(Third ISA Forum of Sociology)で報告を行う。課題3「全国的な不登校支援の再編のあり方と支援の効果の把握」については、引き続き課題2の事例研究の遂行を通して得られる手がかりを元に質問紙調査票を作成し、全国の適応指導教室を設置する934自治体からランダムサンプリングした自治体に質問紙調査を郵送実施する。調査では、地方分権時代における全国的な不登校支援の再編のあり方とそれが社会的に弱い立場におかれている保護者・子ども達の支援に及ぼす効果を把握することを目指す。
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Research Products
(1 results)