2015 Fiscal Year Annual Research Report
ランニング支持期の後足部外反モーメントの発生機序(接地パターンによる機序の違い)
Project/Area Number |
15H06703
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Research Institution | Fukui University of Technology |
Principal Investigator |
辻本 典央 福井工業大学, スポーツ健康科学部, 講師 (20757520)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | ランニング / 支持期 / 後足部外反 / モーメント / 接地パターン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、下肢の慢性ランニング障害の要因と考えられる、支持期の後足部外反モーメントの発生機序を接地パターン毎(後足部接地、中足部接地、前足部接地)に明らかにすることであった。これまでに、後足部接地のランナーについての後足部外反モーメントの発生機序は明らかにできているため、本研究では、新たに中足部接地、前足部接地のランナーを被検者として集め、後足部接地のランナーと同様の分析を施すことで、接地パターン毎の比較を行った。 これまでの研究で、後足部接地のランナーにおいては、接地直前の足部側方速度と、接地中期の足関節中心に対するCOPの側方変位の両方が、後足部外反モーメントの発生に影響していることが認められていた。しかし、本研究の結果、中足部接地や前足部接地では、接地直前の足部側方速度による影響は少なくなり、足関節中心に対するCOPの側方変位が接地直後から接地中期に渡って後足部外反モーメント発生に影響することが認められた。よって、下肢の慢性ランニング障害の予防を目的に、後足部外反モーメントの発生を抑えようとする場合、全ての接地パターンにおいて、足関節中心に対するCOPの側方変位を少なくする必要があることが明らかとなった。さらに、後足部接地のランナーに限っては、接地直前の足部の側方速度を小さくする必要があることが示された。 このように、接地パターン毎に後足部外反モーメントの発生を抑えるための対策が異なるといった、下肢の慢性ランニング障害の予防に対する有益な知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、1年目に、接地パターン毎の後足部外反モーメントの発生機序を明らかにし、接地パターン間で共通する機序と異なる機序を明らかにする予定であった。 本研究開始以前に、後足部接地のランナーのデータは収集できていたため、1年目は中足部接地、前足部接地のランナーの被検者を確保することが求められた。しかし、ランナーの大半は後足部接地であるという先行研究が示すように、後足部接地以外のランナーを確保することが難しく、被検者の選定に多少の時間を費やすこととなった。また、他大学の施設を使用した実験計画を立てていたことや、様々な場所に所属している複数の研究者に実験協力を仰いだことにより、施設の使用日程調整や検者の日程調整に多少時間が費やされ、実際に実験を行うことができたのは、当初の予定より遅れた2月末であった。しかし、実験自体はおおむね順調に進み、従来予定していたパラメータを収集することができた。実験後のデータ分析においても、特段トラブルはなく、中足部接地や前足部接地のランナーにおける後足部外反モーメントの発生機序まで求めることができた。 これらのデータと、従来持ち合わせている後足部接地のランナーのデータとの比較を行い、共通する機序や異なる機序は明らかとなってきている。これは、当初計画していた目的を達成する結果まで到達したと言える。 これらの結果は、今年度行われる、日本バイオメカニクス学会にて発表予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
下肢の慢性ランニング障害の予防のためには、後足部外反モーメントのような障害を導く原因を特定することに加え、障害を導く原因を何らかの手法で評価する必要がある。その評価については、実験室で実施する手法では汎用性に乏しく、多くのランナーを対象にすることができない。そのため、簡易的に、後足部外反モーメント、もしくは後足部外反モーメントの発生に影響を与えている要因を評価できる手法があれば、実験室以外の環境でも多くのランナーを対象とした評価が可能となる。 後足部外反モーメントを直接測定するためには、床反力計とモーションキャプチャシステムによる同期測定が必要であるが、実験室以外でそのような条件が揃っている場合は少ない。そこで、後足部外反モーメントの発生に影響を与えている要因として1年目の研究で明らかとなった、接地中の足関節中心に対するCOPの側方変位(全接地パターン)と、接地直前の足部の側方速度(後足部接地パターンのみ)を、簡易的に評価する手法を確立することを2年目の研究課題とした。これらのパラメータは、足関節中心軌跡と足圧中心軌跡を同座標系で捉えることができれば測定することができる。よって、ビデオカメラを用いて足関節中心軌跡を、足圧分布測定器を用いて足圧中心軌跡をそれぞれ測定し、得られたデータから足関節中心に対するCOPの側方変位と、足部の側方速度を求めることで、後足部外反モーメントを簡易的に評価することができると考えた。ここで得られた値が、実際の後足部外反モーメントの値とどの程度の関係性であるかを調べ、後足部外反モーメントの簡易的な評価が有効であるかを検討する。 仮に、本研究で実施した手法によって後足部外反モーメントを簡易的に評価することができれば、臨床やスポーツイベントのような現場において、多くのランナーを対象に評価を行うことができると考えられる。
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