2015 Fiscal Year Annual Research Report
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15H06716
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Research Institution | Nagoya Women's University |
Principal Investigator |
安井 健 名古屋女子大学, 家政学部, 講師 (00758196)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 教育人類学 / 教育人間学 / educational anthropology / 贈与交換 / マルセル・モース / Metaphor and Thought / 隠喩論 |
Outline of Annual Research Achievements |
Metaphor and Thought(1993)の中から、特に教育に焦点を当てた2つの論文、Petrie, H.G, & Oshlag, R.S, “Metaphor and learning”及びSticht, T.G, “Educational uses of metaphor”を検討した。その中で、たとえ科学的な事項の理解であれ、学習であれ、そこには日常生活で使用されるのと同じくらいの重要性をもって、メタファーが介在していることが明らかになってきた。例えば、学習者がまったく未知の知識を習得する場合においては、メタファーによる類似性を起点として「形式」化することにより新たな知識を創造していくことが可能になると目されるのであり、こうした考察によって、マルセル・モースの贈与交換論と言語学における隠喩論の関連性において「形式」を1つの焦点としてきたここまでの研究成果に、さらなる厚みを増すことが可能となってきた。また、兵庫教育大、および北海道大での研究交流を通じて、本研究の主題ともいえる「教育人類学」という学問の位置づけについて、大きな示唆を得た。特に、西洋におけるeducational anthropologyが二分法的な人間学と人類学のカテゴリーではなく、少なくとも生物学的、哲学的、文化人類学的、歴史的人類学といった多様な側面から考えられてきたことを踏まえることが可能になった点は大きい。こうした結果から、日本の教育人間学が哲学的なアプローチに大きく拠っている点を改めて確認するとともに、たとえば、歴史的偶有性や差異性を視野に入れた「歴史的人間学」のアプローチを参照することで、本研究の目的である新たな「教育人類学」の展開を多角的に進めることが可能になるという見通しを得た点は、本年度の研究における成果の一つである
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度に計画していた研究の中で、特に実地での調査研究に関しては、計画通りには進めることができなかった。北海道大学との研究交流によって各種資料などのアイヌ文化研究についての具体的な研究成果の提供を受けることで、研究計画を大幅に遅滞させることはなかったが、当初に見通していたよりも広範かつ精緻に進められている最新の研究成果の中で、本研究の位置づけに関して再考する必要性も明らかになってきた。こうした部分的な計画の見直しが必要とはいえ、次年度の研究課題を進める中で十分に修正可能な範囲であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、精力的に教育人間学、教育人類学関連の史資料を収集し、当初リストアップしていた文献については、一部を除いてかなり広範に入手することができた。こうした文献の読解を引き続き進めていくとともに、平成28年度は特に「伝統」概念に着目した分析を進めていく予定である。また、実地調査については、研究者との交流を通じて計画の見直しを行っていくとともに、可能な範囲で遂行していく予定である。さらに、これまでの研究結果を論文としてまとめ、公刊する予定である。
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