2015 Fiscal Year Annual Research Report
2層グラフェンを用いた2次元銀結晶の創製と増強ラマン散乱分光への応用
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15H06723
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Research Institution | Toyota Technological Institute |
Principal Investigator |
鈴木 誠也 豊田工業大学, 工学部, 研究員 (90590117)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | グラフェン / 化学気相成長 / X線光電子分光 / 銅 / 大面積化 / 二層グラフェン / ラマン散乱分光 / 単結晶 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は、本研究の基盤技術である(1)大面積単結晶グラフェンのプロセス最適化と、(2)銅上に形成した大面積グラフェンの転写法の改善を行った。(1)では銅表面状態を調べ、グラフェン核生成のメカニズムについても検討した。以下それぞれについて詳述する。 (1)では、大気圧化学気相成長(CVD)法によりグラフェンを銅板上へ成長させた。大面積単結晶を得るためには、グラフェンの核生成密度を低減させる必要がある。本研究では、炭素源導入の直前にArのみでアニールを行うことで、効果的に核生成が抑制できることを示した。X線光電子分光による銅表面分析から、Arアニール中に銅の極表面(約4 nm)が酸化されることを明らかにした。この酸化は石英管中の残留酸素によるものと考えられる。また、酸化により得られた銅の化学組成がCu2Oであることを明らかにした。銅表面の酸素が核生成サイトを不活性化することは既に報告されており、本研究は残留酸素を積極的に利用した核生成抑制手法を確立した。 この手法により、最大で約 2.6 mmの単結晶グラフェンを成長させた。また100マイクロメートル以上の2層領域が存在しており、この領域へハロゲン化銀を挿入していく。さらに本手法は、従来法と比べ、アニール時間が半分に短縮されており、今後の効率的な研究推進に繋がる。 (2)では転写手法の改善を行った。転写時の銅エッチング液中に銅裏面に成長したグラフェンが混入し、転写グラフェン上に堆積する問題があった。エッチング途中の銅板を取り出し、銅板裏面のグラフェンを綿棒で擦り取り、新しいエッチング液に交換するプロセスを繰り返すことで、この問題を解決した。ラマン散乱分光の結果から、この手法がグラフェンへ欠陥導入しないことを確認した。 今後は、確立した手法を軸に、グラフェン層間への2次元銀創製と増強ラマン散乱分光応用へ展開する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
所属組織のキャンパスリニューアルにより、熱CVD装置が配置されていたクリーンルームが移転になった。新クリーンルームへの移転作業、移転後の装置調整や条件最適化のため、グラフェン成長が計画通り進まなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
グラフェンの2層領域を300マイクロメートル以上に増大させる予定であったが、グラフェン層間へのハロゲン化銀挿入プロセスの確立を優先し、実験の遅れを取り戻す。
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Research Products
(2 results)