2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15H06735
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
李 増先 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 研究員 (90755498)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | ジェームズ・スチュワード=ロックハート / 和刻本漢籍 / ケンブリッジ大学図書館 / 香港 / 威海衛 / 明治期 / 清末 / 租界 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はケンブリッジ大学図書館のロックハートコレクションのデジタルアーカイブを推進しつつ、コレクションの購入経緯をロックハート書簡およびケンブリッジ大学University Archiveから明らかにした。 コレクションの購入は今まで一度しか知られておらず、実際は1937年および1948年の二度にわたり、購入されたことが今年度の研究で明らかになった。この事実は『ケンブリッジ大学所蔵和漢古書総合目録』(ピーター・コーニッキー、林望共編、以下林目録)にも言及されておらず、二度目の購入については『Cambridge University Reporter』にも痕跡が残されていなかった。 それに加え、National Library of Scotlandにあるロックハート書簡の中からは、コレクションの元の所有者であるSir James Stewart Lockhart自筆の目録(インデックスカード)が発見され、データ化を進めている。ロックハートが目録作成時に用いた記述法等に検討を加えた。 同時に、ケンブリッジ大学図書館にあるロックハートコレクションのデジタルアーカイブの作成も進めた。特に今年度のデジタルアーカイブではロックハートコレクションを代表する和刻本漢籍を中心に進めた。言及すべきものとしては『武備志』(寛文四年刊、覆明天啓年版)のデジタルアーカイブである。該当書物は日本国外での所蔵は少なく、ヨーロッパでの所蔵はケンブリッジ大学図書館を含め、僅かに二カ所だけである。 以上、発見された新事実等をまとめ、平成28年度5月開催される「日本比較文化学会第38回大会」で報告する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は研究計画通りに研究を進めることができた。ケンブリッジ大学図書館のロックハートコレクションのデジタルアーカイブを進めながら、その成立および購入の背景をCambridge University ArchiveおよびNational Library of Scotlandのロックハート書簡から明らかにした。 コレクションの成立には元の所有者であるロックハートが中国大陸に四十年あまり滞在した際に、自ら購入したものが多く、それ以外は当時の中国の官僚や商人からの贈り物が含まれる(この部分がほとんど和刻本漢籍である)。これらの書物はロックハートの元でインデックス化され、現在その自筆の目録(インデックスカート)はロックハート書簡の所有者であるGeorge Watson CollegeからNational Library of Scotlandに寄託されている。今年度はその目録のデータ化を開始したが、目録には計1100枚以上のインデックスカードが含まれており、データの完成はもう少し時間を要すると見込まれる。 一方、本研究の中軸である研究対象のデジタルアーカイブに関しては夏および冬の二回にわたり、研究対象中の計32のアイテムのデジタルアーカイブを作成することができた。撮影画像数は12000枚を数える。 しかし、今年度の調査では研究対象のロックハートコレクションは二度にわたり購入されたことが明らかになり、前出林目録中に言及されるのは一回目の購入である。二回目の購入に関しては前出目録には言及されておらず、詳細も不明である。来年度は特にこの点について注意を払いながら、本来の研究計画を優先する予定である。 本年度作成したデジタルアーカイブは「ケンブリッジ大学付属図書館蔵日本古典籍閲覧システム」に統合し、現在ウェブ上で限定公開している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在日本国内で研究対象のロックハートコレクションについての認識は、前出林目録中の記述に限る。しかし、その中では研究対象への誤認識があることが本年度の研究では明らかになった。先述のように、研究対象は1937年および1958年の二度にわたり購入された経緯があるが、林目録には一度目の購入しか言及されていない。報告者が研究対象に対する認識も当初林目録に由来するが、今年度の発見を踏まえ、研究対象の規模が大きく膨らむ可能性が示された。 そのため、今後の研究の推進方策としては、まず、一度目の購入に焦点を当て、当初の計画通りに研究を進める予定である。本来の研究計画を推進しながら、二回目の購入については、資料収集およびフィールドワークの際に注意をはらいつつ、今後の研究のさらなる展開につながるよう進める予定である。 無論、研究を推進していく中で新たに発見された事実等は報告者の所属する学会(Royal Asiantic Society、日本比較文化学会、中世文学会等)を始め、国内外の学術会議(Asian Studies Japan Conference等)での口頭発表に加え、学術雑誌への論文投稿も予定しており、同時にデータベースの構築およびウェブ上での情報公開も進めていく。
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Research Products
(5 results)