2015 Fiscal Year Annual Research Report
オブジェクティブ・パネルデータを用いた消費者購買行動の動的モデリング
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15H06747
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
李 振 関西大学, ソシオネットワーク戦略研究機構, PD (30759923)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 消費者購買行動 / Web Crawlingデータ / オンライン市場 / 行動パス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度主に以下の3つの分析を行っていた。 まずは、過去のデータに加え、TaobaoとeBayという2つC2C型eコマースサイトから、約10万件の月間売上データを利用し、C2C型eコマースの販売者の成長パスとその成長の分布の散らばりについてクラスター分析と分位点回帰分析と通して試みた。その結果、オンライン市場における販売者の成長は「等速型」、「加速型」と「減速型」といった3つのクラスターがあり、その中で、「加速型」かつ売上の時系列的ばらつき(分散)の少ない成長パターンが販売者の業績に最もよい効果を与えるという結論を示した。その結果からも、消費者側の購買行動傾向をある程度把握できると考えられる。 次に、B2C市場における顧客レビューと店舗販売成果との関係を解明するために、Tmall.comとJD.comという2つのサイトから、約1年分のショルダーバッグの販売データをWeb Crawling技術で収集して解析を行い、さらに異なる市場における顧客レビューが店舗の販売成果に与える影響の差も調べた。結果として、顧客レビューと販売成果の間に同時影響が存在することが証明できたことと共に、更に、知覚リスクの高い市場において、レビューの質による影響が有意であることに対して、知覚リスクの低い市場では、レビューの量による影響が有意であることを明らかにした。その結果から、他人の口コミやレビューに対する消費者の行動反応をある意味で把握でき、店舗の販売戦略の効率化となる知見を得ることができる。 また、Web Crawlingデータを用いた分析だけでなく、Web Log技術によって取得されるオンラインストアの「訪問率」および「滞在時間」などのデータと、Web Crawlingによって取得される売上データの融合による分析を試みた。こうした分析を通して、消費者購買行動モデルの精度を向上することが期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通り、平成27年度は、今までの既存データを用いて、オンライン市場における消費者購買行動のモデル分析を進めている。それと同時に、Web Crawlingのプログラムも従来のTaobaoとeBayから、Tmall.com, JD.com, Amazonなどのプラットフォームに拡張し、各オンライン市場のトランザクションデータを時系列的に(週間ごとに)収集している。また、分析の精度を上げるために、分析対象となる商品データも異なる製品カテゴリーから収集している。現時点では、5つのオンライン市場の約半年のトランザクションデータが収集でき、ある程度水平的比較を行うことができると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度には、集めたデータを用い、オンライン市場における消費者購買行動の実証的推定を中心に行う。既存研究理論をベースに、データの前処理と説明変数間の理論的関係を想定し、異なるプラットフォーム間の相互作用を含む社会的相互作用と、消費者購買行動の動的変化を考慮するモデルを組むことによって、オンライン市場における消費者の需要関数の実証的推定を行う。具体的に、Becker (1991)のネットワーク外部性理論を実証する予定であり、彼の経済理論をベースに、オンライン市場における同じ商品の販売量の時系列影響、およびその販売量の時系列変化が当該商品の次期価格に与える影響について、経済モデルを構築しながら、Web Crawlingデータを用いて分析している。また、異なるオンライン市場や商品におけるネットワーク外部性の差もデータで議論してみたいと考えている。 ただし、データの複雑さにより、推定したパラメータの有効性と一致性が落ちる可能性がある。その場合、研究協力者とモデリングや分析手法の妥当性についてディスカッションし、様々な推定方法を試行錯誤しながら、当てはまりの最もよい推定結果を導き出す。
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Research Products
(2 results)