2015 Fiscal Year Annual Research Report
拡散プロセスを用いて作製した次世代鉄系超伝導線材技術の構築
Project/Area Number |
15H06769
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
尾崎 壽紀 関西学院大学, 理工学部, 講師 (20756663)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 超伝導線材 / 臨界電流特性 / 結晶粒界 / 化学組成 |
Outline of Annual Research Achievements |
電気抵抗がゼロである超伝導材料技術は創エネ・蓄エネ・省エネを推進する社会システムの改革を実現するキーテクノロジーである。鉄系超伝導物質は高い磁場中特性を示し、また、銅酸化物系にはない3次元等方性を示すため、次世代高温超伝導材料として高い潜在能力を持つ物質である。これまで、鉄系超伝導線材の実用化を目指し、一般的な線材作製法であるPIT(powder-in-tube)法(超伝導体の原料を金属管に充填し加工後、熱処理を行うことで超伝導線材を得る方法)に独自の工夫を施した鉄拡散PIT法を開発した。本研究では、低炭素エネルギー社会の構築を目指し、シース材料を超伝導物質の原料に利用した次世代鉄系超伝導線材技術の確立を目的としている。 平成27年度は、鉄拡散PIT法に冷間圧延を組み合わせることでFeSe超伝導線材を作製した。Seを充填した鉄管の両端をアーク融解を用いて完全密閉し、熱処理と冷間加工を行い、圧延加工が超伝導特性と微細構造に及ぼす影響を調べた。鉄拡散PIT法に冷間圧延と再熱処理を組み合わせることでFeSe線材の超伝導転移を確認した。 また、FeSeの関連物質であるKxFe2-ySe2の単相結晶育成の確立にも取り組んだ。出発原料としてK2Seを用い、900℃という比較的低温で結晶を育成するOne-step合成の熱処理条件の変化が、育成される結晶の相制御に及ぼす影響を調べた。200℃まで5℃/hで結晶を育成することでTconset = 44.2 Kの高Tc相が育成することがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
鉄拡散PIT法に冷間圧延と再熱処理を組み合わせることでFeSe線材の超伝導転移Tczero~8.5 Kを観測したが従来の鉄拡散PIT法で作製したFeSe線材よりも低い。また、冷間圧延後、再熱処理後を行うことで結晶粒界特性はいくぶん改善されたが大きな臨界電流密度Jcの改善には繋がらなかった。One-step合成法の熱処理条件を変えることで高Tc相が育成することがわかったが、単相の結晶を育成するには至っていないので、達成度としてはやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、鉄シースにSeを充填した鉄管をアーク融解を用いて完全密閉し、様々な厚さに圧延加工を行った後、結晶粒間結合を改善させるために、熱処理温度と熱処理時間を変化させることでFeSe超伝導線材の高Jc化を目指す。また、FeSe線材が高い多結晶体よりも高いTcを示すメカニズムの解明に取り組む。超伝導線材技術の構築の他に新しい材料開発としてFeSeの関連物質であるKxFe2-ySe2の単相結晶育成を確立すると共に、大型単結晶を育成し詳細な物性評価を行う。更にK以外の原子や分子、イオンのインターカレーションによって、新たな鉄系超伝導線材の材料開発を行う。
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Research Products
(2 results)