2015 Fiscal Year Annual Research Report
アウトリーチ支援により重度の精神障がい者の回復過程を支える看護の役割に関する研究
Project/Area Number |
15H06774
|
Research Institution | Kobe Women's University |
Principal Investigator |
福山 敦子 神戸女子大学, 看護学部, 講師 (60758530)
|
Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
|
Keywords | アウトリーチ / 地域精神保健 / 精神看護 / ACT |
Outline of Annual Research Achievements |
精神医療保健福祉の世界的な動向として、先進国では「脱施設化」が進み、世界的には精神科病床は減ってきている。イタリアにおいては精神病院を全廃し、国民保健サービスに精神医療を統合することを目指しており、看護師が患者と一緒に地域に出たと報告されている。こうした世界情勢にもかかわらず、先進国の中でも日本は精神科病床数が世界一であり、さらに平均在院日数も、諸外国の10倍にのぼり、世界保健機構(WHO)や国連人権委員会からたびたび勧告が出されている。このような世界的な背景やノーマライゼーションの視点から、日本においても2002年から地域移行に向けた改革が行われているが、その効果もわずかな病床数の減少にとどまり、改革が進展していない現状がある。そこで、脱施設化が成功しているイタリアの精神保健地域システムにおける看護師の役割を明らかにし、日本との文化的背景を比較したうえで、日本における重度の精神障がい者がアウトリーチ支援を継続して受けることによって獲得した、地域の中での回復過程を明らかにし、その回復過程を支える看護師の役割を明らかにすることを研究の目的とした。 研究採択期間に計画していたイタリアへの視察が実行できず、必要な情報を文献及び、研究者の過去の自らの視察と照らし合わせてまとめた。結果は大阪大学大学院文学研究科・臨床哲学教室の方々との合同発表会の開催を行った。また、イタリアの精神医療改革や地域精神医療保健制度を学ぶための「リベルタの会」を立ち上げ、精神医療に携わる専門職や、当事者・家族、学者、または関心のある一般市民などの参加が得られた。このような啓発活動は今後も継続していく予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
H27年度の計画として、視察報告をまとめ、投稿する計画であったが、まだ投稿できていない状態。それに関しては、重要な資料にイタリア語の文献があるが、なかなか読み進められないこともひとつの要因となっており、文献検討の段階で滞りがある。 今後は計画的に文献検討を進めると同時に、研究に対するスーパーバイズを受ける頻度を増やし、研究計画や分析法などの指導を増やし、遅れをカバーしていくように努める。
|
Strategy for Future Research Activity |
H27年度の計画としていた、イタリアと日本の精神医療保健の比較を、文化や生活を踏まえた検討を行った報告書としてまとめていく。 H28年度は日本で、地域精神医療保健福祉を包括的に行っているアウトリーチチームを探し、研究の同意を得る。そこの利用者家族を紹介してもらう。利用者の訪問記録を掘り起こし、回復のプロセスを可視化する。可視化した回復のプロセスから、転機となったエピソードを見つけ、そのエピソードを中心として、アウトリーチ支援の利用者とその家族、関わったアウトリーチチームメンバーにインタビューを行う。インタビューから実際に行われていた支援を抽出し、地域生活を維持し、地域で回復する利用者に必要な看護支援や援助は何かを考察する。計画では5~6名としていたが、時間の制約や利用者、アウトリーチチームの負担を考え、1名以上3名以下で今年度のインタビューを計画する。
|