2015 Fiscal Year Annual Research Report
nesfatin-1/NucB2の摂食および飲水行動における脳内機構の解明
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15H06803
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
吉村 充弘 産業医科大学, 医学部, 産業医学基礎研究医員 (00464462)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | nesfatin-1/NucB2 / 摂食行動 / 飲水行動 / ラット / 中枢神経 |
Outline of Annual Research Achievements |
多くの種において、飲水と摂食の間には密接な関係がある。摂食調節機構は、視床下部に局在する満腹中枢と摂食中枢という2中枢説を基盤に発展し、研究が精力的に行われている一方、飲水調節機構はあまり解明されていない。強力な摂食促進ペプチドのグレリンが飲水抑制作用を持つことが明らかとなり、また、新規摂食促進ペプチドのnesfatin-1/NucB2も飲水抑制作用を持つことが報告された。最近、申請者はnesfatin-1/NucB2が脱水誘発性摂食抑制に関わる鍵分子である可能性を見いだした。摂食では反対の作用をもつ2つのペプチドが飲水行動においては同じ作用をもつことは、非常にユニークである。この2つのペプチドを比較しながら、様々な摂食抑制モデルを用いて、摂食および飲水におけるnesfatin-1/NucB2の役割を解明することを目的とした。 これまでに、シスプラチン誘発性摂食抑制モデルおよびセロトニン枯渇モデルにおける摂食関連ペプチドの変化について明らかにしてきた。また、新規摂食抑制ペプチドnesfatin-1/NucB2に着目し、脱水誘発性摂食抑制におけるnesfatin-1/NucB2の役割を明らかにしてきた。平成27年度は、シスプラチンを単回腹腔内投与後に、ラットの体重増加が有意に抑制されること、およびその際の摂食量が有意に低下することを見出し、脳内各神経核におけるnesfatin-1/NucB2細胞数が有意に上昇することを証明した。シスプラチン腹腔内投与による摂食抑制は、nesfatin-1/NucB2のアンチセンスの脳室内投与によって有意に改善した。飲水量および尿量はシスプラチン投与による有意差を認めなかった。今後はグレリンの中枢における摂食・飲水作用と比較しながら、nesfatin-1/NucB2の脳内機構の解明を進めていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、シスプラチンを単回腹腔内投与後に、ラットの体重増加が有意に抑制されること、およびその際の摂食量が有意に低下することを見出し、脳内各神経核におけるnesfatin-1/NucB2細胞数が有意に上昇することを証明した。シスプラチン腹腔内投与による摂食抑制は、nesfatin-1/NucB2のアンチセンスの脳室内投与によって有意に改善した。飲水量および尿量はシスプラチン投与による有意差を認めなかった。初年度は概ね順調に計画遂行できており、今後はグレリンの中枢における摂食・飲水作用と比較しながら、nesfatin-1/NucB2の脳内機構の解明を進めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
想定されるnesfatin-1/NucB2の脳内作用部位について、nesfatin-1/NucB2の脳内局所微量注入による飲水および摂食への効果の検討を行う。飲水中枢と思われる部位にnesfatin-1/NucB2、nesfatin-1/NucB2中和抗体またはnesfatin-1/NucB2のantisenseを微量注入し、体重、摂食、飲水および尿量を経時的に測定し、比較検討する。脳内局所破壊によるnesfatin-1/NucB2の摂食および飲水への効果を検討する。同様にnesfatin-1/NucB2の摂食および飲水中枢内作用部位と想定される部位を破壊し、nesfatin-1/NucB2を投与し、体重、摂食、飲水および尿量を経時的に測定する。同様にnesfatin-1/NucB2中和抗体またはnesfatin-1/NucB2のantisenseでも行い、比較検討する。シスプラチン誘発性摂食抑制モデル以外に、グレリン末梢投与および拘束ストレスなどのモデルラットを作成し、同様の実験を行い、比較検討する。
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Research Products
(6 results)