2015 Fiscal Year Annual Research Report
食物要因による唾液中IgA増加メカニズムの解明:歯科からの健康寿命延伸を目指して
Project/Area Number |
15H06809
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Research Institution | Kanagawa Dental University Junior College |
Principal Investigator |
山本 裕子 神奈川歯科大学短期大学部, その他部局等, 講師 (60756568)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 唾液 / IgA / 短鎖脂肪酸 / 盲腸内容物水分量 / 盲腸内容物粘度 / 炎症性サイトカイン / フラクトオリゴ糖 / 食物繊維 |
Outline of Annual Research Achievements |
難消化性糖類の継時的摂取が盲腸内容物中IgA濃度と唾液中IgAレベルに与える変化を解明するため、ラットにフラクトオリゴ糖5%配合飼料とポリデキストロース2.5%+ラクチトール2.5%配合飼料を1週・4週・8週摂取させ、盲腸内容物中IgA濃度、盲腸内容物中短鎖脂肪酸濃度、唾液中IgA分泌速度の変化を測定した。フラクトオリゴ糖5%配合飼料を摂取したラットでコントロール群のラットに比較して、1週から8週まで唾液中IgA分泌速度の有意な上昇と、8週における盲腸内容物中短鎖脂肪酸濃度の有意な上昇が認められた。解析の結果、唾液中IgA分泌速度の上昇には、盲腸内容物中IgA濃度ではなく、盲腸内容物中短鎖脂肪酸濃度が関与していることが判明した。この実験結果の内容を英語論文にまとめ、現在アメリカの栄養系の雑誌に投稿中である。フラクトオリゴ糖摂取のラットとは対照的に、ポリデキストロース+ラクチトール配合飼料摂取のラットにおいては、唾液中IgA分泌速度の有意な上昇は認めたが、盲腸内容物中短鎖脂肪酸濃度はコントロール群と比較して有意に低下していた。原因としては盲腸内容物の水分量と粘度、盲腸組織重量の違いで、短鎖脂肪酸の盲腸上皮からの吸収度合が違うことが考えられる。実際にポリデキストロース+ラクチトール群のラットの盲腸内容物水分量は、コントロール群と比較して有意に高かった。この実験結果をもとに現在英語論文作成中である。別の実験として、唾液中IgAレベルと短鎖脂肪酸、盲腸内容物の性状、顎下腺炎症性サイトカインとの関係を検討する実験を行った。ポリデキストロース4%配合飼料をラットに摂取させ、唾液中IgAレベル、盲腸内容物中および門脈血中短鎖脂肪酸濃度、盲腸内容物水分量・粘度、顎下腺サイトカイン量を測定した。現在データを解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した研究計画のうち、1.ラットに継時的に難消化性糖類を摂取させ、盲腸内容物中IgA濃度と唾液中IgA濃度の変化を解明、2.唾液中IgA濃度が増加した際に、ラット顎下腺で起きている変化を解明、までの実験は行うことができた。4.GPR43欠損マウスに難消化性糖類を摂取させ、唾液中IgA濃度の変化を解明、に関しては、すでにGPR41・GPR43ノックアウトマウスを搬入し、現在実験に備えてこれらのマウスを繁殖中である。3. ラット盲腸内にシリコンチューブにより短鎖脂肪酸を直接投入し、唾液中IgA濃度の変化を解明、に関しては、今年度中に実験を行う準備を進めているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は申請書に記載した研究計画のうち、3. ラット盲腸内にシリコンチューブにより短鎖脂肪酸を直接投入し、唾液中IgA濃度の変化を解明、4.GPR43欠損マウスに難消化性糖類を摂取させ、唾液中IgA濃度の変化を解明、の実験を行い、論文にまとめる予定である。唾液中IgAレベルが増加した際の、顎下腺形質細胞数の測定は、ELISPOT による測定を試みたがうまくいかなかった。この実験に関しては、実験に用いる動物種をラットからマウスに変更するか、研究協力者との共同研究により行いたいと考えている。
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