2015 Fiscal Year Annual Research Report
Animal Ethics Based on Contemporary Christian Thought
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15H06812
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Research Institution | Nagano National College of Technology |
Principal Investigator |
鬼頭 葉子 長野工業高等専門学校, 一般科, 准教授 (00756554)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 動物倫理 / 倫理学 / 宗教哲学 / キリスト教 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ドイツと英国を中心に、近年重要な論争テーマとなっている動物への倫理的配慮問題について探求し、共同体における人間の責任としての動物倫理の今日的意義を明らかにすること、および日本社会における動物倫理の構築を、現代キリスト教思想の観点から試みることである。本研究は、申請者の学術論文「現代キリスト教思想における動物倫理の位置づけ」(宗教哲学会『宗教哲学研究』第32号、2015年3月、81-98頁)の成果を発展させた内容となる。すなわち、現代キリスト教思想によるアプローチを用いて、日本の思想界における動物倫理をグローバルなレヴェルへと接近させ、日本における動物倫理の思想的基盤を構築する試みである。研究実績の概要は以下のとおりである。 (1)欧州(英国とドイツ)における動物倫理に関する文献収集と解釈、思想状況のマッピングを進めている。また、日米欧の動物倫理について比較研究を進めている。 (2)京都大学を拠点として学外の研究者、獣医師、動物学者と連携して研究会(人と動物の倫理研究会)を立ち上げた。本研究会は、識者による講演、討議および学際的研究を目的としたもので、第1回研究会を京都生命倫理研究会と共同で開催した。なおこの研究会の内容については、メーリングリスト、ホームページなどの手段を用いて発信した。 (3)上記成果について、国内学術誌(宗教倫理学会発行の学術誌『宗教と倫理』等)へ論文として投稿した。また、国内学会(「関西倫理学会」「日本宗教学会」)、および(2)の研究会にて、研究成果を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は下記の4項目について並行して進めており、いずれも計画通り進捗している。 <研究計画1:欧州における先行研究調査> 欧州(英国・ドイツ)におけるキリスト教思想に基づく動物倫理の現状について、文献調査および学会動向の調査を行っている。特に、A.リンゼイ(英国)、R.ハーゲンコルト(ドイツ)らの著書・論文を読み進めている。 <研究計画2:研究体制の整備> 国内の思想系研究者、獣医師、動物学者らと連携して研究会を立ち上げ、討議および研究成果の社会的発信を行う体制整備を開始した。本年は東京大学文学研究科の一ノ瀬正樹教授を中心とした研究会を発足させ、共同研究体制を整えた。第1回研究会では、現役の獣医師に講演を依頼し、思想的な理論構築に有益な知見を提供してもらい、参加者とディスカッションを行った。 <研究計画3:国際学会での情報収集と海外研究者との討議> 海外の研究動向調査および世界の最先端の研究者とのネットワーク構築のため、英国のThe Oxford Centre of Animal Ethicsが主催するサマースクール(国際学会)での口頭発表を計画しており、発表要旨を学会事務局に登録した(開催日:平成28年7月)。 <研究計画4:日米欧における動物倫理の比較研究> 上記国際学会での口頭発表に関連して、日米欧における動物倫理の研究状況について整理を進めている。どう発表において、それぞれの思想的立場を浮き彫りにする予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度(最終年度)は、次のように研究を推進する。 <研究計画1:動物倫理の思想史的解明と日本社会への適用可能性についての考察> 平成27年度までの研究成果を踏まえ、近代から現代にいたるまで、主に欧州における動物倫理へのフェミニズム思想の影響を、思想史的アプローチにより明らかにする。また、西洋で発展してきた動物倫理思想が日本社会の文脈における動物倫理に、いかに適用し得るかについても考察する。 <研究計画2:研究体制の展開> 前年度に発足させた京都大学を拠点とした研究会に加え、東京大学においても研究会を発足させる。京都市は京都大学以外にも、多数の大学・研究機関が近接して立地する教育都市であり、多数の研究者と共同研究を行いやすい環境にある。 <研究計画3:国際学会での情報発信と海外研究者との討議> 英国のThe Oxford Centre of Animal Ethicsが主催するサマースクール(国際学会)、およびドイツ・ミュンスターの「神学的動物学研究所」が開催する国際学会に参加し、日本の動物倫理について研究状況を発表すると同時に、海外の動物倫理研究者と意見交換を行う。 <研究計画4:国内外への研究成果の発信> 研究成果について、国際学術誌(The Journal of Animal Ethicsなど)および国内学術誌(『アルケー』(関西哲学会発行)、『長野高専紀要』(長野高専紀要)など)へ論文として投稿する。また、上記国際学会、研究会にて成果発表を行う。研究会の活動内容およびその成果については、ホームページを立ち上げ、随時公表する。また、優れた海外文献の邦訳出版を計画する。
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Research Products
(6 results)