2015 Fiscal Year Annual Research Report
セルロースナノフィブリル表面高密度グラフト化による高強度複合材料の開発
Project/Area Number |
15H06848
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
藤澤 秀次 国立研究開発法人 森林総合研究所, バイオマス化学研究領域, 研究員 (80756453)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | ナノセルロース / 複合材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、セルロースナノフィブリル(CNF)をポリメチルメタクリレート(PMMA)の補強材として用いることで、高強度を有する透明複合材料の調製を目的としている。本年度は、複合材料の調製条件を検討し、CNFの力学物性を評価した。まず、針葉樹由来製紙用漂白クラフトパルプのTEMPO触媒酸化によって、幅3nmのCNFを調製し、得られたCNFをN,N-dimethylformamide中で分散させた。この分散液中でPMMAを溶解させ、キャスト乾燥によってCNF/PMMA複合フィルムを得た。得られたフィルムは熱溶融によって成形が可能であり、フィルム中でCNFは均一にナノ分散していた。一般的に、高い親水性を示すCNFをPMMA中で均一分散させることは難しいが、TEMPO酸化CNFの有機溶媒分散性を活かすことで初めて可能になった。このように幅3nmのCNFがナノ分散しているため、フィルムは高い透明性を示した。得られたCNF/PMMAフィルムの熱膨張率測定を行ったところ、CNF添加量に伴って熱寸法安定性が向上することが分かった。わずか0.5%のCNF添加で30~60℃における熱膨張率が半分以下に低下した。また、熱寸法安定性の向上は、PMMAのガラス転移領域以上で特に顕著であった。これら物性の向上はナノサイズかつ高アスペクト比を有するCNFがPMMA中で緻密なネットワークを形成したためと考えられる。このように、CNFをポリマーマトリックス中で均一分散させることで、ポリマーの透明性を維持したまま効率的な物性の制御が可能でり、石油系材料の物性を上回る、新規環境調和型材料の調製が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
バイオマス由来材料である、セルロースナノフィブリル(CNF)をTEMPO触媒酸化という表面改質法によって調製し、透明高分子複合材料の力学物性向上に取り組んでいる。一般的に親水性のCNFを疎水性高分子中で分散させることは困難であるが、本研究では、TEMPO酸化CNFの有機溶媒分散性を活かすことでナノ複合化に成功している。このように、幅3nmのCNFを分散させることで、得られる複合材料は高い透明性・熱寸法安定性を示すことを見出している。これらTEMPO酸化CNFによって得られる物性は、これまで報告されているCNF/高分子複合材料と比べても優れたものであり、独自性があると言える。また、CNFだけでなく、ナノフィラーとしての利用が期待されているクレイやカーボンナノチューブと比較しても優れたものであり、高い新規性を有する研究であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の課題は、CNF/疎水性高分子の耐衝撃性の向上である。高い親水性を示すCNFと疎水性高分子の界面親和性は弱く、得られる複合材料は一般的に脆くなってしまう。解決策のひとつとして、CNF表面の選択的改質が挙げられる。CNFの水酸基をターゲットとした化学修飾は、最終的に結晶内部にまで進行してしまうため、表面選択的改質が難しい。しかし、本研究で用いているTEMPO酸化CNFは、表面のみにカルボキシル基が導入されているため、このカルボキシル基を足場とすることで表面選択的改質が可能である。これまでに、TEMPO酸化CNFの表面に様々な極性を有する側鎖を導入できることを確認している。導入は表面カルボキシル基に対して高い選択性を有しており、非常に高密度である(1.6 groups/nm2)。また、側鎖の導入によって様々な極性を有する溶媒中での分散性を制御でき、あらゆる高分子との複合化が可能である。このように、界面の相互作用を制御することで得られる複合材料の物性について評価する。
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Research Products
(8 results)