2015 Fiscal Year Annual Research Report
デザイナーメタボロンの形成による高効率有用物質生産技術の開発
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15H06859
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
森 裕太郎 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 特別研究員 (50758539)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | Enzyme Engineering / Metabolon / Self-assembly / Bioproduction / Cell factory |
Outline of Annual Research Achievements |
植物の光合成を通した二酸化炭素の固定化により生産されるバイオマスを再生可能資源として、バイオ燃料やバイオベース製品を生み出すバイオリファイナリーは、資源・エネルギー枯渇問題と地球温暖化等の環境問題の双方を克服しうることから、近年精力的に研究開発と工業化が進められている技術分野である。バイオリファイナリーにおいて微生物を生体プラントとして用いて,基幹原料となるC5糖・C6糖から有用物質を生産する試みは非常に重要な分野の1つとされている。ここで,微生物を用いた有用物質生産の研究において重要な要素の1つとなるのが、植物細胞のCalvin-Benson回路・フラボノイド生合成代謝経路などの一部で形成される代謝酵素集合体:メタボロンである。 メタボロンとは、細胞内において代謝経路に関わる酵素群が,非共有結合的なタンパク質―タンパク質間相互作用によって集積化した代謝酵素集合体である。このメタボロンを形成することで、代謝中間体をある酵素から次の酵素へ迅速に受け渡す連続した反応(カスケード反応)が可能となる。ここで問題となるのは,人工的な代謝酵素集合体を形成するのために必要である「生体内で使用可能な相互作用ペア」が非常に少ないことである。そこで本申請では、生体内で使用可能な新規の相互作用ペアを合理的に探索・設計し、これを用いることで、鍵となる反応に関わる代謝酵素を「最適な数だけ最適な構造で」集積化した’デザイナーメタボロン’を用いた高効率な有用物質の生産技術を提案する。 具体的には,天然に存在するタンパク質-タンパク質相互作用ペアであるコヘシンとドック林を鋳型として,アミノ酸変異を導入することにより,生体内で相互作用を示す新規タンパク質相互作用ペアを作成し,これを用いてデザイナーメタボロンの形成を試みる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、「細胞内で利用可能な新規タンパク質相互作用ペアの探索と、デザイナーメタボロンの形成による高効率有用物質生産法の開発」に向けて、以下の3ステップで研究を遂行している.(1) 細胞内で使用可能な新規タンパク質相互作用ペアの合理的改変・設計.(2) 新規タンパク質相互作用ペアの特性評価・機能分析.(3) 大腸菌内でのデザイナーメタボロン形成の最適化と有用物質生産.このうち平成27年度では1と2について検討を行った.特に本研究の根幹となる新規相互作用ペアの探索は、天然に存在するタンパク質相互作用ペアであるコヘシン-ドックリンを鋳型とした「大腸菌内でのスプリットGFP蛍光スクリーニング」により行う. まず新規タンパク質相互作用ペアの鋳型として5種類のコヘシンドックリンペアを選択した.これらをコードする遺伝子をタンパク質発現用のベクターに挿入した.また細胞内結合の指標となるスプリットGFPとのFusionタンパク質として発現を試み,スクリーニング方法の確立を達成した.また大腸菌におけるタンパク質月源の条件を最適化することにより,安定した発現量の獲得に成功した.よって今後は遺伝子組換え等を行い,目的とする細胞内で結合力を示すコヘシンードックリン変異体の調製を試みる.
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の検討により,鋳型となるコヘシンードックリンの発現に成功したものの,未だ細胞内で結合力を示すペアの獲得には至っていない.そこで平成28年度はランダム変異を含めたドックリンへのアミノ酸変異導入を行う.具体的には,ドックリンの持つEF-hand Likeモチーフに焦点を当て,この部位への変異導入を行う.コヘシンードックリン相互作用はカルシウムイオン依存的な結合であり,EF-hand Likeモチーフがカルシウムイオンを保持することにより構造が変化し,初めて相互作用を示すようになる.これをアミノ酸変異導入を行うことにより,カルシウム非存在下においても結合状態の構造とし,細胞内で安定したコヘシンードックリン相互作用の形成を試みる.まずはEF-hand Likeモチーフにおいて,カルシウムイオンと結合を形成するアミノ酸を狙ったポイントミューテションを行う.また並行してランダム変異導入を行い,その結果をフィードバックすることにより,カルシウム非依存的な構造安定化への合理的設計の指針の獲得を目指す.最終的には細胞内で複数の酵素を配列させることで,カスケード反応により酵素反応の促進を試みる.
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