2015 Fiscal Year Annual Research Report
多数の微小結晶を用いた結晶構造解析手法および自動化システムの開発
Project/Area Number |
15H06862
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
山下 恵太郎 国立研究開発法人理化学研究所, 放射光科学総合研究センター, 基礎科学特別研究員 (20721690)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | X線結晶解析 / 構造生物学 |
Outline of Annual Research Achievements |
第三世代放射光によるX線の超高輝度化や,タンパク質調製技術の進歩などにより,1つのタンパク質の構造決定に必要な時間やコストは大幅に削減された.しかしながら,膜タンパク質や複雑な複合体など生命機能の解明に重要な構造解析の難度は高く,現状簡便に解析が可能な20-30 μm以上の大きさの結晶を得ることは難しい.近年,大型放射光施設SPring-8のビームラインBL32XUで利用可能になったマイクロビームX線を用いることで,10 μm程度の微小結晶からでも十分な強度の回折を得ることができるが,数回程度の照射で試料が破壊される放射線損傷のため,多数の微小結晶の回折強度測定を繰り返し,完全なデータを収集しなければならない. 本研究は,多数の微小結晶を用いたデータ収集およびデータ処理の自動化を行うことで,構造解析可能な構造振幅データを全自動で得ることを目的としている. 本年度は,微小結晶を用いたデータ収集・処理のワークフロー化を行い,これまで手作業が必要であった部分の自動化を行った.共同研究により入手した試料を用いてシステムのテストを行い,全自動でのデータ収集に成功した.データ処理もわずかな手作業のみで行えるようになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度はデータ収集法およびデータ処理法に着手し,共同研究によって得た種々の微小結晶試料を用いて基礎データを集めた.多数の微小結晶を用いて高分解能データを収集するワークフローを確立し,その自動化を進めた. 結晶凍結ループ上に多数散布された試料に対し,低線量回折スキャンを行い,タンパク質試料からの回折が確認された位置から,5-10°の振動写真データを収集するフローは,閾値を予め設定しておく点を除き,ほぼ自動化された.個別データ処理は完全自動化され,データのマージも最終的な判断は必要になるが,ほぼ自動化できている. 既に実際の試料を用いた構造解析にも多数成功しており,まだ改良の余地はあるものの,十分に実用性のあるシステムが開発できている.これらのことから,おおむね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
既に実際の試料を用いた構造解析にも成功しているが,特にデータ処理方法にはまだ改良の余地があると考える.本年度は,データの分類方法,スケーリングアルゴリズム,異常データ棄却方法の改善に注力する. また,データ処理結果のデータ収集へのフィードバックも重要な課題である.現状得られているデータでは問題になっていないが,結晶方位の偏りを定量化して実験にフィードバックしたり,リアルタイムで解析処理を行うことで十分な結果になったと判断できた時点で実験を中断し次のサンプルを測定するなど,実験の効率化には不可欠な技術である.本年度はこのフィードバック機構の開発も行う. 開発した技術はすぐにユーザに供出し,実際の高難度構造解析に役立てる他,さらなる問題点や改善点の抽出につなげていく.
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Research Products
(1 results)