2015 Fiscal Year Annual Research Report
抗腫瘍免疫応答を抑制する制御性T細胞の新規特異的分子の同定
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15H06880
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
杉山 大介 国立研究開発法人国立がん研究センター, 先端医療開発センター, 研究員 (90759375)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | トランスレーショナルリサーチ / 制御性T細胞 / ヒト研究 / CD8陽性T細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
新規がん治療法の開発が進むにつれ、難治性・再発性悪性腫瘍患者に効果的な治療法として免疫療法が注目されている。その中で免疫チェックポイント阻害剤の開発が急速に進み、メラノーマ・肺がん患者に対する治療薬として承認されている。一方で、その効果は限定的であり、すべてのがん患者に効果的な免疫療法が切望されている。がん免疫療法を向上するためには、がんを殺傷するエフェクター機能を強化することと、そのエフェクター機能を抑制する機構を解除することが望ましい。本研究では、この免疫抑制解除に焦点を当て、がん患者検体を用いた研究をおこなう。胃がん患者由来の腫瘍組織からリンパ球を採取し、免疫抑制系に重要な役割を果たす制御性T細胞(Tregs)の動態をフローサイトメーターにて解析した。ヒトTregsは、その特異的マーカーの一つである転写因子FOXP3および細胞表面分子CD45RAの発現差異により、3つの細胞画分に分類できる。その中で抑制活性の最も強いエフェクター型Tregsを解析したところ、末梢血中にはエフェクターTregsの割合が2~5%程度であったが、胃がん局所には20~30%の割合で存在するという結果を得た。次に、このがん局所浸潤エフェクター型TregsとCD8陽性T細胞に発現する免疫チェックポイント分子を解析した。その結果、エフェクターTregsには共刺激分子であるICOSが高発現していた。一方で、CD8陽性T細胞ではICOS発現が見られず、末梢血中のCD8陽性T細胞およびエフェクターTregsにおけるICOS発現も低い状態であった。これらの結果から、胃がん局所のエフェクターTregsの選択的マーカーの一つであることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度の研究では、胃がん患者検体を用いたフローサイトメーターを用い、末梢血および腫瘍局所に存在するリンパ球の解析をおこなった。免疫細胞解析では、末梢血中に比べ腫瘍局所においてCD4陽性FOXP3強陽性CD45RA陰性のエフェクター型Tregsの割合が多く、20~30%であった。また、分子発現解析では免疫チェックポイント分子であるCTLA-4, PD-1, LAG-3等を解析し、CTLA-4の発現が腫瘍局所エフェクターTregsにおいて高い傾向を示した。一方で、T細胞に発現する共刺激分子を解析したところ、ICOSの発現がエフェクターTregsで高く、とりわけ腫瘍局所エフェクターTregsで高いがCD8陽性T細胞をはじめとした他の免疫細胞では低発現であった。このことから、本研究の目標である腫瘍局所エフェクターTregsに選択的発現を示す分子の同定に向け、ICOSがその候補分子であることを見出した。当初の計画では、今年度は腫瘍局所エフェクターTregsを採取し、その機能解析および網羅的解析により、末梢と比較し腫瘍局所エフェクターTregsのみで発現する分子の同定を試みる予定であった。この計画が遂行できなかったため、現在では本研究課題の進捗は遅れており、来年度で本研究を完了できるよう研究を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究進捗が遅れていることから、来年度で研究を完了できるよう調整する。今年度の研究において胃がん局所エフェクターTregsの選択的分子マーカーとしてICOSが候補であることを見出したため、来年度ではICOSを標的としたTreg機能解除の検討をおこなう。ただし、それと平行し、腫瘍局所エフェクターTregsの網羅的遺伝子解析も実施しICOS以外の候補分子の探索も続ける。ICOSを標的とした研究では、ヒトPBMCを使用し、ICOSに対するモノクローナル抗体を用い、エフェクターTregsを除去できるか否かを検討する。その後、エフェクターTreg除去による抗原特異的CD8陽性T細胞の機能向上を見出し、臨床応用に向けた基盤データを得る。また、上記網羅的遺伝子解析により探索した新たな選択的分子に対する抗体あるいは機能阻害化合物を作成し、それらを用いたTreg機能解除効果を検討する。これらの結果から、新規Treg解除による免疫療法の向上効果を実証する。
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