2015 Fiscal Year Annual Research Report
セルロース分解酵素のモーター運動に寄与する構造要素の解明
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15H06898
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Research Institution | Okazaki Research Facilities, National Institutes of Natural Sciences |
Principal Investigator |
中村 彰彦 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設), 岡崎統合バイオサイエンスセンター, 助教 (20752968)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | セルラーゼ / 一分子観察 / X線構造解析 / セルロース |
Outline of Annual Research Achievements |
まずカビの一種Trichoderma reesei由来のセルロース加水分解酵素(TrCel6A)については全長及び触媒ドメイン又は吸着ドメインとリンカー領域に分割した3種のサンプルのセルロースへの吸着速度、解離速度、運動速度を全反射蛍光顕微鏡を用いて測定した。その結果リンカー領域及び吸着ドメインがセルロースへの吸着に大きな寄与が有る事が明らかとなった。また活性型と不活性化変異体TrCel6Aの運動を比較した所、活性型変異体では遅い運動と速い運動の2種類が観測されたのに対し不活性型変異体では速い運動しか観測されなかった。即ちTrCel6Aは分解を伴ったプロセッシブな運動の他にセルロース表面を拡散している事が分かった。 セルロース資化性バクテリアCellulomonas fimi由来のセルロース加水分解酵素(CfCel6B)については顕微鏡観察用の変異体の作成が終了した。V4C, S31C, S288Cの3種を試した結果V4Cが最も生産性が良くかつ活性の低下もない事が確認できた。また触媒ドメインのみと吸着ドメインとリンカー領域に分割した顕微鏡観察用サンプルの作成も完了した。そしてCfCel6Bの触媒ドメインのX線結晶構造を最高分解能1.6 Angstromで解析する事ができた。その結果CfCel6Bでは基質を取り込む側の基質結合サイトにTrCel6Aにはないトリプトファン残基が存在し、より長い基質結合サイトを形成している可能性がある。また加水分解反応を行う活性中心を覆っているループ構造が長く、かつ生成物を排出する側のループ構造も長い事も判明した。これらの構造的性質はセルラーゼがセルロース分子鎖を加水分解しながら運動する際に重要であると言われている為、TrCel6AとCfCel6Bの運動性にどのような違いが有るのかは興味深い。今後作成したCfCel6Bの観察を行い検証を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通りバクテリア由来セルラーゼCfCel6Bの触媒ドメインのX線結晶構造を明らかにし、カビ由来のTrCel6Aの触媒ドメインとの違いについて構造の観点から明らかにする事ができた。またTrCel6Aの全長、触媒ドメインのみ、吸着ドメイン+リンカー領域の吸着、脱着及び運動速度の解析が終了した。CfCel6Bの顕微鏡観察用の変異体の作成もできており、予定通り性質の解析を行うことができているため。
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Strategy for Future Research Activity |
作成したバクテリア由来CfCel6Bの全長、触媒ドメイン、吸着ドメインのそれぞれのセルロースへの吸着速度(kon)、脱離速度(koff)及び運動速度(ktr)を一分子観察により明らかにする。それにより吸着、分解運動、脱着の反応素過程での各ドメインの寄与を明らかにする。加えてそれぞれのパラメーターをカビ由来TrCel6Aの物と比較する事で、構造の違いが酵素の性質にどのような違いを生み出しているのか明らかにする。それらのパラメータのうちで他方と比較して分解に有利であると考えられる物が有ればドメイン同士を交換したキメラ酵素を作成しどのような性質となるか検証する。
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