2015 Fiscal Year Annual Research Report
疑問文埋め込み現象に関する予測力のある形式的意味論の構築
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15J00143
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
上垣 渉 慶應義塾大学, 言語文化研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 疑問文 / 態度報告述語 / 包括性 / 選択制約 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、自然言語において、疑問文が埋め込み節に現れる構文の意味論についての研究を遂行中である。たとえば日本語の「太郎は誰が来たかを知っている」という文において、「誰が来たか」は疑問文であるが、「知る」の補文として埋め込まれている。このような文の意味がどのようにして構成されるのかを合成的意味論の観点から研究することは、疑問文の意味とはどのようなものか、節を埋め込む述語(とくに態度報告述語)の意味とはどのようなものかという言語学、そして哲学における根幹的な課題をとく鍵となる。
申請者の特別研究員PDとしての研究の初年度である平成27年度は、申請者の博士論文に基づき、研究計画のうち、節を埋め込むことのできる述語の選択制約と、埋め込まれた疑問文の解釈の包括性(exhaustivity)に関する研究を行った。ここで選択制約とは、それぞれの述語が埋め込むことのできる節の種類(疑問文か平叙文か)に対する制約を指す。たとえば、「知る」は疑問文も平叙文も埋め込むことができるが、「信じる」は平叙文しか埋め込むことができず、「尋ねる」は疑問文しか埋め込むことができない。また、解釈の包括性とは、「太郎はどの学生が来たかを知っている」という文であれば、太郎が全ての学生について、その学生が来たか来てないかを知っていることを意味するのか、または、一部の来なかった学生については知らなくても良いのか、に関する解釈の細部を指す。
述語の選択制約に関しては、アムステルダム大学Floris Roelofsen氏との共同研究に基づき、英語の"wonder"や"investigate"といった述語が平叙文を埋め込むことができないのは、これらの動詞に内在的な無知(ignorance)に関する意味要素から説明できることを明らかにした。また、解釈の包括性に関しては、この述語による差異をアンケート調査に基づく実験で検証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では解釈の包括性に関しては、この述語による差異をアンケート調査に基づく実験での検証を完全に終了させる予定であったが、当初予定していた実験デザインが完全に機能しないことが判明したため。とくに、推論に関する調査において、アンケート中の質問で、問題となる推論を記述した文が「字義通り」に解釈される必要があるが、これを正確にコントロールするのに、実験デザインの調整が必要であった。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き解釈の包括性に関するアンケート実験を進める。また、この際、申請者が博士論文で提唱した、包括性が述語の否定繰り上げ(neg-raising)とかかわるという仮説を実験的に検証する。 また、選択制約についても研究をすすめ、ほかの意味クラスの述語に関しても、語彙の意味に基づいてその選択制約が説明できるかを検証する。 さらに、研究計画にある疑問文を埋め込む述語の真偽性(veridicality)についても研究を推し進める。最終的には疑問文を埋め込む述語の類型のなかで、選択制約、包括性、真偽性の三点が、どのように相関しているかを調べ、これを最も効率的に記述できる理論を構築する。
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Research Products
(6 results)