2015 Fiscal Year Annual Research Report
北海道の地域特性を踏まえた景観の保全・創出と地域活性化
Project/Area Number |
15J00202
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山崎 嵩拓 北海道大学, 工学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 広域景観 / 行政施策 / 産業振興 / 緑 / 農業関連産業 / 北海道 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は1次産業が盛んな北海道において、特に農業に関わる地域産業が盛んな帯広都市圏を対象に研究を行った。研究目的はは地域産業が創出する景観の特性とその課題について明らかにし、産業振興と並行して進める事が可能な景観形成の方策について考察を行う事である。以下に調査の概要と得られた結論をまとめる。 1)地域産業と景観緑に関する施策を対象に、変遷の把握と現行施策の比較を行った。変遷では、産業施策の特徴が時期により変化している事に着目した。初期は国の開発地区指定に基づく工業開発が中心であり、その後自治体ごとに企業誘致に関する条例を独自に制定し、近年では都市圏で連携した基本計画の策定や複合的な産業施策の運用を行っている。また、現行施策として企業誘致条例に着目すると、優遇対象地区や緑化に対する支援措置の有無といった点で自治体ごとに差がある事を示した。 2)帯広都市圏に点在する地域産業施設の立地傾向と立地選定理由を把握するために、農業協同組合と民間食品関連企業の工場立地調査と立地選定に関するアンケート調査を行った。組合と企業ではそれぞれ立地傾向は異なり、組合の工場は作物の集荷特性により立地場所が決定される事から、半数が市街化調整区域に立地している。一方企業は他企業との近接性が重視され、企業誘致条例の優遇対象でもある工業団地に約6割の工場が立地している。 3)地域産業施設が創出する景観特性を把握するために、建築面積や建蔽率等の把握と土地利用規制の分析、現地調査を行った。その結果、主に製造業に当たる企業の工場では緑化率20%が義務付けられるため、建築物の視覚的な遮蔽効果がある。しかし組合の施設は製造業に該当しない事から緑化は3%のみである。また、建蔽率や建築面積では、立地する土地利用区分により傾向がある事を明らかにした。 以上の成果を論文としてまとめ、査読付き論文集への投稿を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、交付申請書に示した研究目的「北海道の地域特性である1次産業等の生業により創出される広域景観に着目し(①)、良好な景観の保全・創出に資する方策を明らかにした上で(②)、景観を契機とした地域活性化の要因把握を目的とする(③)」に対して、一定の成果を挙げている。その対応関係について以下に示す。 ①研究対象とした帯広都市圏では、周辺自治体と連携して「フードバレーとかち」をはじめとする食と農に関わる地域産業政策を総合的に展開している。更にその地理的特性から自治体境界や土地利用境界を越えた広域的なまとまりをもつ景観が形成されている。つまり、「北海道の地域特性である1次産業等の生業により創出される広域景観」を有する地域である。 ②本研究では複数の農業に関わる産業施設が創出する景観特性について分析を行った。その結果、工業団地・市街地・市街化調整区域の区分により、植栽と建築物で構成される産業施設の景観特性が異なる事を把握している。こうした状況に対して、区分ごとの特性に応じた地区計画の運用や緑化協議制度の設計に関する考察を行っている。つまり、「良好な景観の保全・創出に資する方策」の一端を明らかにしている。 ③帯広都市圏では農業の成長産業化が、都市経営上の重要課題に位置付けられている。一方で農用地内における大規模な工場の立地などは、景観上の課題としてこれまで懸念されてきた。本研究では地域産業の振興と並行した景観緑施策として、工業団地の公共緑地整備により建築物の視覚的な遮蔽効果を担保する事や、条例の制定を通じて事業者による緑化の負担を軽減する事などの有効性を示している。つまり、「景観を契機とした地域活性化の要因把握」に関する検討を進めている。 以上より、本研究の「研究の目的」の達成度は,「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、これまで行ってきた広域景観に関する研究の体系化を研究目的としている。そのためには、広域景観は複数の土地利用を有する事と、事業者や地域住民の協力なくして達成できない事という特徴を考慮する必要があると考えられる。特に2004年に施行した景観法では「都市のみならず農山漁村や自然公園の区域」における良好な景観形成を目的としており、「地域住民と事業者の責務」を定めている。そこで、景観に関する学術研究と社会的関心の動向と関係性について、景観法施行以降を対象に分析を行い、国際学会への投稿及び口頭発表を行う予定である。 加えてこれまで行ってきた研究を再構成する事で、広域景観に関する研究の体系化を目指す。
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Research Products
(5 results)