2015 Fiscal Year Annual Research Report
高速応答高分子液晶コンポジット材料の低駆動電圧化と電界応答メカニズムの解明
Project/Area Number |
15J00288
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小橋 淳二 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 液晶 / 高分子ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
高分子液晶コンポジット材料は光重合性液晶と非重合性液晶(ホスト液晶)との混合材料であり,液晶中に形成される高分子ネットワークからの配向規制力を利用して高速な戻り応答を実現可能である.しかしながら,高分子ネットワークの存在は駆動電圧上昇や散乱といった問題の原因となる.本研究は,高分子液晶コンポジット材料の低駆動電圧化と高分子ネットワーク内部における液晶の応答メカニズムの解明を目的としている. 散乱・しきい値電圧・応答速度を考慮した適切なネットワークサイズを求めるために,重合温度を変えて粘度や重合反応速度を変化させることで高分子ネットワークのサイズを変化させ,特性変化を評価した.また,液晶の持つ物性値のうちで駆動電圧を決定する支配的なパラメータを明らかにするために,ホスト液晶を変化させた場合の特性変化の検討を行った.重合温度の変化による最適化の結果,150 nm程度のドメインサイズのネットワーク持つ場合に1ミリ秒以下の高速な戻り応答,かつ波長632nmにおける90%以上の高い透過率が得られることが明らかになった.また,ホスト液晶を変化させた場合のしきい値電圧の依存性には,高分子ネットワークの存在しないホスト液晶の場合と近い関係である,誘電率異方性が大きいほど値が下がる傾向が見られた.一方で,ホスト液晶を変えた際にネットワーク形状の変化が生じ,単純にネットワークサイズを揃えることでホスト液晶の特性の比較が出来ないことが明らかになった.ホスト液晶の物性値がしきい値電圧に与える影響を評価するためには,ネットワーク形状の影響を無視できる系における評価が必要であり,今後検討していく予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は,適切なネットワークサイズを求め,駆動電圧を決定する支配的なパラメータを明らかにするために,重合温度およびホスト液晶を変えた時の特性評価を行った.その結果,以下の知見が得られた. 重合温度を下げると材料の粘度が上昇し,光重合性時の液晶の拡散が抑制され,ネットワークのサイズは小さくなる.重合温度の減少に伴い閾値電圧は上昇するが,重合温度を変えても内部の液晶の割合は同じため,閾値電圧以上の駆動電圧に対する屈折率変化量は大きく変化しなかった.ドメインサイズと閾値電圧の関係は,今回測定した100 nmから400 nmの間ではおよそ線形(負の相関)となった.150 nm程度のドメインサイズのネットワークを持つときに1ミリ秒以下の高速応答が得られ,波長632 nmにおいて90%以上の透過率が得られた. ホスト液晶を変化させた素子においては,しきい値電圧は高分子ネットワークの存在しないホスト液晶の場合と近い関係が得られ,誘電率異方性が大きいほどしきい値電圧が下がる傾向が見られた.一方で,予想に反し,ホスト液晶を変えるとネットワークのサイズのみでなく形状が大きく変化するといった問題がSEM観察により明らかとなった.この問題の解決策として,あるホスト液晶を使用して高分子ネットワークを構築し,一度ネットワーク内部の液晶を洗い流す手法を検討しており,一定の成果が得られている.
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Strategy for Future Research Activity |
前年度で得られた知見を踏まえ,来年度は以下の方針で研究を遂行する.ホスト液晶により高分子ネットワーク形状に違いが現れたが,異なるネットワークを形成するホスト液晶において重合温度を変えることで比較を行い,ドメインサイズと駆動電圧の関係に高分子ネットワーク形状による違いがあるかを評価する.また,あるホスト液晶を使用して高分子ネットワークを構築し,一度ネットワーク内部の液晶を洗い流す手法を利用して,同等の高分子ネットワーク中に異なるホスト液晶を再充填し電気光学特性を比較する.これにより,ホスト液晶の物性値が特性に与える影響が明らかになると期待される.更に,ここまでに得られた知見を踏まえて高分子ネットワークにより分割された液晶のモデルを立て,結果の説明を試みる.その後,液晶/高分子コンポジット材料の光重合性を活かした光学素子応用を検討する.
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Research Products
(4 results)