2015 Fiscal Year Annual Research Report
パーソナリティ障害における対人関係機能による対人相互作用過程の解明
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15J00302
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
市川 玲子 筑波大学, 人間総合科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | パーソナリティ障害傾向 / 対人関係 / 社会的認知 / 精神的健康 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は,当初の計画通りに大学生を対象とした2件の集合実施形式調査と1件のペア評定式質問紙調査を実施し,さらに広範な年代の男女を対象とした1件のweb調査に着手した。 まず,2件の集合実施形式調査の結果から,高パーソナリティ障害傾向者における対人関係上の不適応が,他者との関係性に対する不安定な認知や,欲求と一致しない対処行動によって生じていることが明らかとなった。そして,大学生の同性友人ペアを対象としたペア評定式質問紙調査の結果から,高パーソナリティ障害傾向者と友人との間で相互の評価に差異があり,高パーソナリティ障害傾向者は友人から必ずしも否定的に評価されていないことが示された。これら3件の研究によって,高パーソナリティ障害傾向者における個人内の対人不適応のプロセスのみならず,対人間の相互の評価についてもそのプロセスを明らかにしたことで,介入に際したアセスメントに対して新たなアプローチを提供するための基盤を構築しつつあるといえる。 以上の研究の遂行と並行して,本研究の対象者を大学生としていることの妥当性や,研究対象としている5類型のパーソナリティ障害について,全パーソナリティ障害の中での概念的位置づけを明示するために,当初の計画には含まれていなかったweb調査を実施した。具体的には,全パーソナリティ障害の背景にある共通因子の抽出と,年代間のパーソナリティ障害の傾向比較,および各パーソナリティ障害の精神的健康への縦断的影響について検討するために,半年間隔(2回)の縦断的web調査を行う。調査の実施およびデータ収集は株式会社クロス・マーケティングに委託している。平成27年11月に1回目の調査を実施したため,平成28年度5~6月頃に2回目の調査を実施する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は,当初の予定通りに3件の調査研究を実施し,加えて当初の計画には含まれていなかった1件のweb調査を実施した。いずれの研究においても有用な知見が得られたため,それらの成果をもとに論文化を進めている。以上のことから,研究がおおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度も引き続き,調査の実施と論文執筆を行う。 調査については,高パーソナリティ障害傾向者における友人間の社会的認知の差異に関するさらなる知見を得るために,大学生を対象としたペア評定式質問紙調査を新たに1件実施する。これと並行して,当初の計画には含まれていなかったが,本研究の対象者を大学生としていることの妥当性や,研究対象としている5類型のパーソナリティ障害の全パーソナリティ障害中での概念的位置づけを明示するために,平成27年度に実施した縦断的web調査の2回目を実施する。 論文執筆については,実施済みの研究の成果を論文化して投稿する。
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Research Products
(5 results)