2016 Fiscal Year Annual Research Report
GSL-NSP 軍拡競争によるアブラナ科草本とシロチョウ亜科蝶類の共進化関係
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15J00320
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
岡村 悠 千葉大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 化学生態 / シロチョウ / アブラナ / グルコシノレート / NSP / 植物植食者相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はモンシロチョウ属のシロチョウ4種がアブラナ科草本の保有する様々なグルコシノレートに対してどの様に適応しているのかを明らかにするために、シロチョウの保有するグルコシノレート解毒酵素関連遺伝子に注目し研究を進めた。 まず、シロチョウ4種からグルコシノレート解毒関連遺伝子の配列をRNAseqによって抽出した。すべてのシロチョウから解毒関連遺伝子が得られ、それぞれの種によって個別の配列を持っている事がわかった。ここで得られた配列をもとにプライマーを設計し、RT-qPCRでそれぞれの遺伝子がどの様な食草を食べた際に発現するのかを調べた。その結果、それぞれの遺伝子は異なった発現応答を見せる事に加え、その発現応答の差異が植物側の異なったグルコシノレート組成によって引き起こされている事が示唆された。シロイヌナズナのグルコシノレート組成の異なる変異体を用いた実験においても同様の結果が得られた。これはそれぞれの遺伝子がグルコシノレートの解毒に作用する事に加え、それぞれの遺伝子の機能が異なっている事を示唆した。 この結果をうけて、それぞれの遺伝子の機能がどれほど異なっているのかを直接的に調べるために、大腸菌や昆虫細胞においてこれらの遺伝子を発現させ、異種発現タンパク質を得て機能解析を行った。本年度は、昆虫細胞、大腸菌の両方で目的である遺伝子の発現に成功し、現在その機能解析を進めているところである。もしそれぞれの遺伝子の機能の違いが明らかに出来れば、シロチョウがどうアブラナ科草本に適応してきたのかをより具体的に議論出来るようになり、適応遺伝子の進化に応じた植食者側の多様化機構を説明できる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はシロチョウのグルコシノレートに対する適応形質の分子的な機構に焦点を当て、ドイツのMax Planck研究所に1年間滞在し、研究を進めた。その中で、RNAseqデータ解析とシロイヌナズナ突然変異体を用いた摂食実験、発現量測定実験、異種発現系を用いた機能活性測定実験を行うことが出来た。機能活性を全てのシロチョウ種のグルコシノレート解毒遺伝子について行う事は出来なかったが、その他の研究は1年間でおおむね遂行でき、多くのデータが得られたため、研究は順調に進展していると言える。発現量測定実験では新たな知見が得られ、今後追加実験を行うことで論文として発表できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで研究によって、シロチョウ4種のグルコシノレート分解酵素についての配列が得られ、それぞれの遺伝子からタンパク質を発現させる事が出来た。しかしながら未だにその機能活性を計るには至っていない。本年は異種発現させて得られたこれらのタンパク質の最適な反応条件を探索し、機能活性をおこなう。加えて、発現量測定実験において、複数の遺伝子がグルコシノレートの分解に作用している事が示されている。上記の機能解析に加えて、実際に幼虫の腸内でどの様なグルコシノレートに反応してそれぞれの遺伝子の発現応答が起こっているのかを検証する予定である。 また、博士課程最終年度で有るため、学会発表、論文投稿にもこれまで以上に時間を割き、積極的にこれまでの研究成果を発表する機会を設ける。
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Research Products
(3 results)