2015 Fiscal Year Annual Research Report
新規分子配向技術を用いた液晶性有機半導体太陽電池の高性能化に関する研究
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15J00448
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大森 雅志 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 単結晶X線構造解析 / 微小角入射広角X線散乱 / フタロシアニン誘導体 / 配向制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
液晶性有機半導体は自己組織的に分子が配向し、異方性のある電気的特性を示す。そのため、液晶性有機半導体の分子配向方向の制御はデバイス応用を考えた上で必要不可欠な技術である。本研究課題は新規分子配向制御技術を確立し、有機エレクトロデバイスの高性能化・実用化の基盤となる研究を行うことを目的としている。液晶性有機半導体として一軸性の高いキャリア移動度を示すことが報告されている、フタロシアニン誘導体を用いた。 新規分子配向制御技術の確立のためには、薄膜内における分子配向方向を評価する必要がある。そのためには、薄膜内におけるフタロシアニン誘導体の分子パッキング構造および分子配向方向を明らかにする手法を確立することが重要な課題となる。 1年目は研究実施計画通り、薄膜内における分子パッキング構造の解明についX線散乱法および単結晶試料を用いた単結晶X線構造て検討した。薄膜内における分子パッキング構造に関して、薄膜試料を用いた微小角入射広角解析により解析した。薄膜試料および単結晶試料の両方を用いることにより、詳細な薄膜内の分子パッキング構造を明らかにする手法を確立した。 上記の結果は2年目以降の分子配向制御技術の確立において重要な知見になると考えられる。また、単結晶構造を用いた詳細な薄膜内の分子パッキング構造の決定により、密度汎関数理論等を用いた電気的特性のシミュレーションを行うことが可能となり、実験と理論の比較も可能となると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、液晶性有機半導体太陽電池応用へ向けた新規配向技術の開発を目的としている。1年目は液晶性有機半導体であるフタロシアニン誘導体の構造および配向方向の解析を行い、薄膜の結晶構造の解析手法を確立することを計画した。その課題を解決するため (a)薄膜中におけるフタロシアニン誘導体の分子パッキング構造の解明、(b)フタロシアニン誘導体の単結晶の作製および薄膜中における分子パッキング構造との比較、(c)フタロシアニン誘導体の結晶多形発生のメカニズム解明の三点に関して検討した。 (a)に関しては、SPring-8内のBL46XUにおいて微小角入射広角X線散乱法によるX線回折測定を行うことにより、薄膜中におけるフタロシアニン誘導体の詳細な分子パッキング構造を明らかにした(M. Ohmori et al., J. Nanosci. Nanotechnol., 16, 3312-3317, (2016))。 (b)および(c)に関しては、フタロシアニン誘導体の単結晶を作製し、単結晶X線構造解析を行った。得られた結果と(a)の結果を比較することにより、薄膜中の分子パッキング構造の詳細な構造を明らかにした(M. Ohmori et al., accepted to J. Cryst. Growth (2016))。また、フタロシアニン誘導体は結晶多形が存在することを明らかにし、その発生メカニズムについても解明した。 以上の(a)~(c)の手法により、薄膜内におけるフタロシアニン誘導体の詳細な分子パッキング構造を明らかにした。2年目以降は1年目で確立した薄膜内の分子パッキング構造の解析手法を用いて、フタロシアニン誘導体の配向制御を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
薄膜中における分子配向方向の制御に重点をおいて検討する。フタロシアニン誘導体はカラム軸方向への高い電荷輸送特性を示すことが報告されている。有機薄膜太陽電池応用のためにカラム軸方向が基板法線方向となる配向手法の検討に加え、有機薄膜トランジスタ応用のため、カラム軸方向が基板平行方向となる配向手法の検討を行う。 現在までにスピンコート法による製膜時、気液界面の表面エネルギーの影響によりカラム軸方向が基板と平行になることが知られている。したがって、製膜時の気液界面を無くすことにより、カラム軸方向が基板法線方向となると考えられる。手法の一例としてスピンコート法による製膜時に気液界面を塞ぐ界面活性剤を混ぜた溶液を用いる手法が挙げられる。本手法により作製した配向膜を用いて有機薄膜太陽電池素子を作製する。 また、気液界面においてカラム軸方向が基板法線方向となるという点を利用し、基板面内方位角方向も制御したカラム軸方向が基板法線方向となる配向膜の作製に関しても取り組む。基板面内方位角方向の制御に関しては薄膜の製膜方向を制御することにより、結晶の成長方向を制御する手法を用いる。本手法により作製された配向膜を用いて有機薄膜トランジスタ素子を作製する。また、トランジスタ特性より得られた材料の電気移動度の異方性と密度汎関数理論等を用いたシミュレーションから得られる電気的特性を比較することにより、理論的にも得られた結果が正しいことを証明する。
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Research Products
(7 results)