2016 Fiscal Year Annual Research Report
ユイスマンス初期作品にみる自然主義の受容と超克ー『薬味箱』から『さかしま』まで
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15J00451
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
安達 孝信 大阪大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | フランス文学 / 自然主義 / ゾラ / ユイスマンス / ゴンクール |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は主に二つの問題に取り組んだ。 第一に、ユイスマンスがゾラの下の自然主義グループに加わった直後に書かれた評論「エミール・ゾラと『居酒屋』」(1877)がその直前に書かれていたバルベー・ドールヴィイによるゾラ批判に対してどのように反論したのかという問題である。バルベーは『パリの胃袋』(1873)などの作品において、ゾラがあまりにも俗悪な対象を長々と詳細に描くことへと傾倒し過ぎていると批判するが、ユイスマンスはバルベーが難詰する腐ったチーズの長大な描写に、匂いが音楽を喚起する共感覚的描写の理想を見る。ユイスマンスはその後、『さかしま』(1884)において味覚が音楽を、嗅覚が幻覚を生み出す奇妙な場面を描くことになるが、それはこれまで指摘されてきたように、ボードレールの「万物照応」だけでなく、ゾラの作品に想を得たものであると考えられる。 第二に、ゾラがゴンクール兄弟の『ジェルミニー・ラセルトゥー』(1865)をどのように受容し、その後出版される自らの処女小説『クロードの告白』(1865)へと生かしたのかという点について考えた。文壇に受け入れられなかったゴンクール兄弟のこの小説に対して、ゾラは数少ない好意的書評を行なった。同年秋に出版されるゾラの小説には『ジェルミニー』からの明白な影響を示す章が存在しているが、そこでゾラがどのようにゴンクールを模倣し、そしてどのような独自性を付与したのかという点について考察した。ゴンクール兄弟の『ジェルミニー』にゾラが認めた長所は、1870年代末にユイスマンスが自然主義的詩を模索するときに依拠することにもなる。 第一の点については、大阪大学フランス語フランス文学会『ガリア』に論文を投稿し、掲載が認められた。 第二の点については、平成29年度に日本フランス語フランス文学会等で発表することを予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1870年代におけるユイスマンスの自然主義受容について、バルベー・ドールヴィイなどの当時の批評家との比較を通して多角的に分析することができた。 またユイスマンスの自然主義受容を考えるうえでは、彼が必ずしも似ていない作家、ゴンクールとゾラ双方から強い影響を受け、独自の作風を模索していたことを見過ごすことができない。ユイスマンスが両作家に認めた共通点こそが、彼が試みた自然主義の詩の源泉となる。1865年に出版された両作家の小説に現れているゴンクール兄弟からゾラへの影響を分析することで、ユイスマンスの自然主義受容を自然主義全体の発展のなかに正確に位置付けることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
1865年以降のゴンクール兄弟からゾラへの影響関係を作品、批評、書簡などの分析を通して総合的に分析する。 1870年代においてゾラ、ゴンクール両氏から強い影響を受けたユイスマンスが、どのように独自の自然主義文学を模索していったのかという点について、散文詩集『パリ・スケッチ』(1880)の風景描写と両作家の風景描写との比較を通して分析する。
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Research Products
(1 results)