2016 Fiscal Year Annual Research Report
創薬を志向した細菌の細胞分裂タンパク質の構造―機能相関解明
Project/Area Number |
15J00589
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤田 純三 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
|
Keywords | 細胞分裂 / FtsZ / 構造変化 / 阻害剤 / 薬剤耐性変異 / イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に構造決定したSaFtsZの2種類のコンホメーションおよび共同研究先のMD計算に基づき議論を進めた結果、コンホメーション間における構造変化に重要な残基を特定することができた。この残基に変異を導入するとGTPase活性が大きく低下することも分かった。さらにこの変異体についてX線結晶構造解析およびMD計算を行ったところ、野生型からずれた構造をしており、各コンホメーションの安定性に大きく寄与していることが明らかになった。これらの成果は現在論文として投稿中である。 SaFtsZと阻害剤の複合体結晶構造については、昨年度のデータでは阻害剤に相当する電子密度が弱く、結合様式をはっきりと決定するには至っていなかった。これは、FtsZの結晶に阻害剤をソーキングする際に結晶の規則性が一部失われてしまったためであると考えられる。そこで、沈殿剤の濃度を下げ、ゆっくりと結晶を成長させることでソーキングに耐えうる強い結晶を作製した。その結果、SaFtsZ-阻害剤複合体の結晶構造を高分解能で決定することに成功した。さらに異なる種類の阻害剤と野生型FtsZとの複合体、および既知の薬剤耐性変異を導入した変異体との複合体についても構造決定に成功した。これらの構造を詳細に比較することで、薬剤耐性変異が阻害剤結合能に与える影響について、また特定の阻害剤が薬剤耐性変異を克服する理由について考察することができた。この結果について、米国の共同研究者と連携しながら論文執筆を進めている。 また、SaFtsZのイメージング系として高速AFMに着目した。金沢大学バイオAFM先端研究センターが主催するセミナーにて予備実験を行ったところ、FtsZフィラメントが形成・成長していく様子を捉えることに成功した。この成果を論文としてまとめるためにさらなる追加実験を行う予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
FtsZが構造変化を起こすために重要な残基を特定し、その役割について解明することができた。また、結晶の質の改善により阻害剤との複合体構造を高分解能で決定し、詳細な結合様式および薬剤耐性変異との関係について明らかにすることができた。さらに、新たなイメージング系において予備的ではあるがFtsZフィラメントの観察に成功しているため、おおむね順調に進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
FtsZの高速AFMによるイメージング系を用いて、変異導入や阻害剤の影響について調べる予定である。またX線結晶構造解析については、引き続きペプチド化したFtsZとFtsAの複合体の結晶化スクリーニングを行い、FtsZ-FtsA相互作用の詳細を解明する。また、細胞分裂に重要なタンパク質群のうち、構造情報が少ないものについて新たに研究ターゲットとして検討し、構造決定を目指す。
|
Research Products
(1 results)